ミアハ
ミアッハ · ミアック · オルミアハ
ディアン・ケヒトの子で、トゥアハ・デ・ダナーンの医者。父が作った銀の義手を生身の腕に取り替えたために妬まれ、四度斬られて殺された。墓から三百六十五種の薬草が生えた。
解説
概要
ミアハ(Miach)は、アイルランド神話のトゥアハ・デ・ダナーンに属する医者である。医神ディアン・ケヒトの子で、妹アルウェズとともに医術を行った。
父がヌアザのために作った銀の義手を、生身の腕に取り替えた。そのために父の妬みを買い、殺される。
神話・物語
ヌアザは戦いで腕を失い、五体満足でなければ王位に留まれないという掟によって王座を退いていた。ディアン・ケヒトが銀の義手を作って与え、王は復位する。
そこへミアハが現れ、銀の上に肉を生じさせて、腕を失う以前とまったく変わらぬ状態にまで戻した。自分にできなかったことを子がやってのけたことに、父は激怒する。
殺し方が異様である。ディアン・ケヒトは剣でミアハの頭を四度斬った。一度目は皮を裂いただけで、ミアハは自らそれを癒した。二度目は頭蓋を割ったが、これも癒した。三度目は脳をかすめたが、なお癒した。四度目に脳が二つに断たれ、そこでようやく死んだ。
医者を殺すには、その医術が及ばぬところまで斬らねばならない。この段階を追った描写が、ミアハという人物の力量を語る唯一の場面になっている。
墓からは三百六十五種の薬草が生えた。ミアハの関節と血管の数に等しい。妹アルウェズがそれを外套の上に並べて整理したが、父が撒き散らしたため、薬草術のすべてを知る者は今もいない。
もっとも、物語の後の方では、ミアハは父と妹の傍らでトゥアハ・デ・ダナーンを癒し続けている。殺されたはずの者が何事もなかったように再登場するというのは、アイルランドの写本にしばしば起きる事態である。
『トゥレンの子らの運命』では、兄弟オルミアハとともに物語の冒頭に現れる。ヌアザの門番の失われた目を猫の目で置き換え、王の黒ずんだ腕から悪霊を引き出して殺し、最後に代わりの腕を見つける。オルミアハが腕を接ぎ、ミアハが治療を仕上げるための薬草を取ってくる。
図像と象徴
図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
象徴として読まれてきたのは、数である。墓から生えた薬草は三百六十五種——太陽年の日数と等しく、全体性を表すとみられる。またヌアザの腕を癒すのに要したのは三度の九日、すなわち二十七日で、これは太陰月にあたる。医術の時間が暦の単位で測られている。
名は通常「ブッシェル」と訳されるが、実際には取り決められた量の穀物を指す語である。アイルランドの法文書では麦芽の量を表す語としても用いられ、マンスターには「ミアハの祝宴」(fleith in méich)への言及がある。
系譜と関係
父はディアン・ケヒト、妹はアルウェズ。兄弟にオルミアハ、ケヘン、キアン、ク、オフトリウルがいる。キアンの子がルーであるから、この英雄の叔父にあたる。
ミアハとオルミアハについては、ケルトの双子神の名残ではないかという説がある。頭韻を踏む名は双子であることの徴とされ、二人がもともと一対の双子だったことを示唆する。トゥアハ・デ・ダナーンの医者であり、ヌアザの宮廷に現れたときには「見目よく、若く、姿がよい」と描かれる。美しさは、印欧語族の第三機能を担う双子神の徴の一つである。祖父はダグザにあたる。
文化的足跡
日本語圏では、この人物は「ディアン・ケヒトに殺された息子」として言及されるにとどまる。
しかしこの挿話は、医術をめぐるアイルランド神話の姿勢を示している。よりよく治せる者が現れたとき、先行者はそれを歓迎しない。そして殺害の結果として、人類は薬草の体系を失う。医神が医術の進歩を妨げるという構図は、ギリシアのアスクレーピオス神話——死者を蘇らせたために雷に撃たれる——とはまた別の苦さを持っている。