マアト
マート
エジプト神話で真理・正義・宇宙の秩序を司る女神で、その語は世界を保つ原理そのものも意味した。頭にダチョウの羽根をいただき、ラーの娘とされる。死者の審判では心臓がマアトの羽根と量られた。混沌イスフェトの対。王は神々にマアトを捧げた。
解説
概要
マアトは、エジプト神話で真理・正義・宇宙の秩序を司る女神である。「マアト」という語は、世界を正しく保つ原理そのものをも意味した。頭に一枚のダチョウの羽根をいただく女性として表され、太陽神ラーの娘とされる。対立する観念は、混沌・虚偽・暴力を意味するイスフェトである。
神話・物語
マアトという語のまとまった用例は、古王国のウナス王の『ピラミッド・テキスト』(前24世紀)に現れる。女神としてのマアトの像は、古王国の中ごろから知られる。第18王朝からは、ラーの娘と明記される。
王はマアトの主として統治し、神々にマアトを捧げる姿で表された。ラメセス9世のオストラコンには、王がマアトを献じる場面が描かれている。第5王朝からは、司法を担う宰相が「マアトの神官」と呼ばれた。

マアトが最もはっきりと現れるのは、死者の審判の場である。死者の心臓は「二つの真理の間」で、マアトの羽根と天秤にかけられる。心臓が羽根より軽いか釣り合えば、死者は楽園アアルへ進むことができ、重ければ怪物アメミットに喰われる。そのあいだ死者は、エジプトの42の州を表す42の「マアトの陪審者」に向かい、罪を犯していないことを一つずつ告白した(否定告白)。
信仰
マアトに捧げられた神殿の最古の証拠は新王国時代のもので、カルナックのマアトの神殿はアメンホテプ3世が造らせた。
図像と象徴
マアトは、頭に立てた一枚のダチョウの羽根で見分けられる。腕に翼をもつ姿で表されることもある。羽根の意味ははっきりせず、同じ羽根は神シューも着けている。審判の場面では、羽根そのものが秤の一方に載せられる。本サイトが掲げるのは、王家の谷のセティ2世の墓(KV15)に描かれたマアトである。
系譜と関係
ラーの娘で、知恵と書記の神トートがその男性の対となる。心臓の計量の場では、トートが結果を記録する。
領分・別名
図版で辿る
フネフェルの死者の書より「心臓の計量」(前1275年頃、大英博物館蔵)/WIKIMEDIA COMMONS、パブリックドメイン
図版はいずれもパブリックドメインまたは CC0。所蔵館・撮影者の表記は各図版のキャプションに従う。例: The Metropolitan Museum of Art, CC0/Wikimedia Commons のライセンス表記に準拠。
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。