夸父
こほ · 夸父逐日 · Kua Fu
太陽を追って走り、黄河と渭水を飲み干してもなお渇き、大澤へ向かう途中で死んだ巨人。捨てた杖は桃の林になった。「夸父逐日」の故事は無謀の譬えとも不屈の志の譬えとも解される。后土の孫。
解説
概要
夸父(こほ、Kuāfù)は、中国神話の巨人で、太陽を追いかけて走り、渇きのために倒れたと語られる。『山海経』によれば大地の神后土の孫にあたり、「夸父逐日」(夸父、日を逐う)の故事で知られる。
神話・物語
『山海経』大荒北経によれば、北の果ての成都載天という山に、黄色い蛇を二匹耳にかけ、二匹を手に握った者がおり、それが夸父であった。后土が信を生み、信が夸父を生んだという。
同じ『山海経』の海外北経は、夸父が太陽と競って走り、日の沈むところまで追ったと記す。喉が渇いた夸父は黄河と渭水を飲み干したが、それでも足りず、北の大沢へ向かう途中で渇き死んだ。捨てた杖は鄧林と呼ばれる林になったという。後世には、この林を桃の林とする説明も生まれた。
一方、大荒北経には、夸父が力を量らずに太陽を追ったという記述と並んで、応竜が蚩尤を殺し、さらに夸父を殺したという伝えも見え、夸父の最期は一つに定まっていない。
故事の受け取り方も二つに分かれる。戦国時代の『列子』湯問篇は「夸父は力を量らず」と書き出し、無謀の例として語る。一方、陶淵明は「山海経を読む」詩で、夸父の大きな志をたたえ、その功は死後の林に残ったと詠んだ。
図像と象徴
耳と手に蛇を帯びた巨人として描かれる。本サイトの主画像は、清代の類書『古今図書集成』に収められた夸父神の図である。
系譜と関係
祖父は后土、父は信。
文化的足跡
「夸父逐日」は今日も中国語の成語として、無謀な挑戦にも、遠大な志にも用いられる。2022年に中国が打ち上げた太陽観測衛星(先進天基太陽天文台)は、この故事にちなんで「夸父一号」と名づけられた。
なお中国の民間信仰と道教は今日も継承されている生きた信仰であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。