双子の英雄
フナフプー · シュバランケ · 双子の英雄
『ポポル・ヴフ』の中心人物である双子フナフプーとシュバランケ。太陽を自称する鳥の魔とその子らを倒し、父を殺した冥界シバルバーの主に球戯で挑んで征し、天に昇って太陽と月になった。完全に保存された最古のマヤ神話。
解説
概要
双子の英雄(フナフプーとシュバランケ)は、マヤのキチェ語文書『ポポル・ヴフ』に含まれる物語の中心人物である。この物語は、完全な形で保存された最古のマヤ神話をなす。
キチェ語でフナフプー、シュバランケと呼ばれる双子は、古典期マヤ(200〜900年)の美術にも同定されている。二人はしばしば相補う力として描かれる。
神話・物語
双子の父フン・フナフプーは、叔父ヴクブ・フナフプーとともに、冥界シバルバーの主たちに招かれて球技の勝負に敗れ、殺された。その首は、瓢箪の木に掛けられた。冥界の主の娘シュキックがその木に近づくと、首が彼女に唾を吐きかけ、彼女は身ごもった。地上へ逃れたシュキックが、祖母シュムカネーのもとで産んだのが、この双子である。
双子には異母兄のフン・バッツとフン・チョウエンがいて、二人を虐げていた。双子は兄たちを木に登らせて降りられなくし、猿に変えてしまった。以来、猿は職人や書記の守り手となった。双子は、自らを太陽と称した鳥の魔ヴクブ・カキシュと、その子シパクナ、カブラカンを、それぞれ策略によって倒した。
やがて双子も、父と同じく冥界の球技に招かれた。冥界の主たちが仕掛けた闇の家、刃の家、寒さの家、豹の家、火の家、蝙蝠の家という試練を、双子は次々に切り抜けた。蝙蝠の家でフナフプーはカマソッツに首を落とされたが、シュバランケが南瓜で代わりの首を作り、球技のさなかに本物の首を取り戻した。
最後に双子は自ら火に飛び込んで死に、その骨を挽いて川に流させた。五日後、二人は魚の姿の人として蘇り、旅芸人に扮して冥界へ戻った。互いを殺しては蘇らせる芸を見せると、驚いた冥界の主たちは、自分たちにもやってくれとせがんだ。双子は冥界の主たちを殺し、今度は蘇らせなかった。こうして冥界を打ち負かした双子は、天に昇って太陽と月になったという。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、吹き矢を構えるフナフプーとシュバランケを描いた古典期後期(600〜900年頃)の皿である(ユカタン出土、メリダのユカタン地方博物館蔵)。
双子という組が、この存在を規定する。二人であることによって、一方が失われても他方が救う。単独の英雄では成立しない構成である。
双子の主題は、多くのアメリカ大陸の神話に繰り返し現れる。古典期の支配者はしばしば、双子の英雄の子孫あるいは超自然的な祖先と称した。
関わる神格・伝承
父はフン・フナフプー、祖母はシュムカネー。ヴクブ・カキシュ一族とシバルバーの主を倒した。
文化的足跡
『ポポル・ヴフ』は「マヤの聖書」とも呼ばれ、メソアメリカ神話の最重要文献である。双子の英雄の物語は、その中核をなす。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。