シパクナ
シパクナ · Zipacna · Sipakna
ヴクブ・カキシュの子で山を作ることを誇る巨大なワニ。四百人の若者に穴で殺されかけたが逃れて彼らを皆殺しにした(四百人は昴になった)。双子の英雄に偽の蟹で谷へ誘い込まれ、山に埋められて石になった。
解説
概要
マヤ神話において、シパクナはヴクブ・カキシュとチマルマトの子であった。
彼と兄弟のカブラカン(地震)は、しばしば魔とみなされた。シパクナは一族の他の者と同じくきわめて傲慢で暴力的であったとされる。巨大なワニとして描かれ、しばしば山を作ったことを誇った。
神話・物語
『ポポル・ヴフ』は、次のような物語を伝えている。ある日、シパクナが浜辺で日を浴びていると、四百人の若者たちが小屋を建てようとしていた。この若者たちは、おそらく酒の守り神たちである。彼らは真ん中の柱にする大木を切り倒したが、持ち上げることができなかった。並外れて力の強いシパクナは、自分が運ぼうと申し出て、ひとりで丸太を担ぎ上げた。
若者たちはシパクナの力を恐れ、殺してしまおうと企んだ。シパクナに深い穴を掘らせ、そのなかにいるところへ丸太を落としたのである。しかしシパクナは、穴の側面に自分の隠れ穴を掘って丸太を避け、死んだふりをした。若者たちが祝いの酒を飲んで酔いつぶれると、シパクナは穴から出てきて小屋を倒し、全員を殺した。四百人の若者は天に昇って、プレアデス星団になったという。
この所業を知った双子の英雄は、シパクナを倒すことにした。双子は大きな蟹の作り物を谷底に置き、そのことをシパクナに知らせた。腹をすかせたシパクナが蟹を捕らえようと谷に入っていくと、双子は山を崩してシパクナを埋めてしまった。シパクナは、そのまま石になったという。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。カブラカンとともに、巨大なワニあるいはカイマンとして描かれるのが典型である。
山を作る者が山に埋められるという結末が、この存在を規定する。自らの誇る力によって滅びる。
関わる神格・伝承
父はヴクブ・カキシュ、母はチマルマト、兄弟はカブラカン。四百人の若者を殺した。双子の英雄に倒された。
四百人の若者が昴になるという結末は、メソアメリカにおける星の起源譚の一つである。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることは少ない。『ポポル・ヴフ』の翻訳を通じて知られる。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。