イツァムナー
イッツァムナー|イツァムナ|イツァムナア|Itzamna|Itzamnaaj|Zamná|神D
マヤ神話で天空に住まう老神で、シェルハス分類の神D。文字・暦・医術を人に授けた最初の祭司とされ、祭司・書記・王の守護神であった。古典期の大きな鳥の神をその鳥の相とする説がある。ヤシュチランなどの王名にも Itzamnaaj が見える。
解説
概要
イツァムナー(Itzamná、古典期の字は Itzamnaaj と読まれる)は、マヤ神話で天空に住まう老神で、創造と学芸を司る最高位の神とされる。シェルハス分類では神Dと呼ばれる。祭司・書記・王の守護神であった。
神話・物語
イツァムナーは、文字と暦、医術といった文明の技を人に授けた存在として語られる。ディエゴ・デ・ランダの記録では「最初の祭司」とされ、みずからも書記であったと伝えられる。年の初めの儀礼で凶事が予告されると、マヤの人々はイツァムナーに災いを避けるよう祈った。
図像と象徴
イツァムナーは、歯の落ちた老人の顔をもつ姿で、天の帯(天空を象る弧)とともに表される。本サイトが掲げるのは、古典期の彩色土器に描かれた神Dを、フランシス・ロビチェクの『マヤの死者の書』(1981年)から採ったものである。
名は itzam(イグアナやカイマンなどの大蜥蜴)と na(家)から「蜥蜴の家」と解され、天空を巨大な爬虫類の身体とみなすマヤの宇宙観に通じるとされる。露や樹液を意味する語根 itz と結んで「撒く者・呪術師」と読む説もあり、名の意味は定まらない。
古典期の図像には、大きな鳥の姿の神(主鳥神)が現れ、パレンケの十字の神殿の銘板では世界樹の頂にとまる。この鳥をイツァムナーが鳥の姿をとった相とみる説と、『ポポル・ヴフ』で双子に討たれるヴクブ・カキシュにあたるとみる説とがある。ヤシュチランやドス・ピラスの王たちは、その名に Itzamnaaj を戴いた。
系譜と関係
配偶者は医療と出産の女神イシュ・チェルとされる。天を四方から支えるバカブを、イツァムナーの子とする植民地期の記録もある。太陽神キニチ・アハウとは図像の上で重なる面をもつ。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。