ククルカン
ククルカーン|羽毛の蛇|翼ある蛇|Kukulcan|Kʼukʼulkan|ワシャクラフン・ウバフ・カン|Waxaklahun Ubah Kan
マヤ、とりわけユカタンのマヤが崇拝した羽毛の蛇の神。名は「羽毛の蛇」の意。キチェのククマッツ、アステカのケツァルコアトルと同じ系統の神格で、10世紀にトゥーラから来た同名の支配者の伝承とも重なる。チチェン・イツァのエル・カスティーヨの蛇の影で知られる。
解説
概要
ククルカン(Kʼukʼulkan、「羽毛の蛇」の意)は、マヤ神話、とりわけユカタンのマヤに崇拝された蛇神である。ケツァル鳥の羽をまとった蛇という姿は、天(羽)と地(蛇)の結合を表し、風と雨、創造と文明をもたらす創造神とされる。
神話・物語
ククルカンの神話そのものは断片的にしか伝わらない。名はユカタン語で kuk(羽)と kan(蛇)から成り、「羽毛の蛇」を意味する。古典期には「戦の蛇」ワシャクラフン・ウバフ・カンとして現れ、古典期マヤ美術の「幻視の蛇」の後古典期の姿とも同定される。羽毛の蛇の信仰は、言語や民族の区分を越えてメソアメリカに広まった最初の宗教であり、交易と交流を促したとみる研究者もいる。10世紀には、ククルカンと呼ばれる支配者あるいは祭司がトゥーラの地から来てチチェン・イツァに至ったとも伝えられ、神と歴史上の人物の名が重なり合う。
図像と象徴
ククルカンは、羽毛をもつ蛇として石柱や階段の欄干に刻まれ、しばしばその顎から人が現れる姿で表される。最も名高い表現は、チチェン・イツァの神殿「エル・カスティーヨ」である。春分と秋分の頃、午後の日差しが北側の階段の欄干に三角形の影を連ね、それがうねりながら降りてくる蛇の胴に見え、階段下部に据えられた蛇頭の石彫へとつながる。この現象が意図して設計されたものか、偶然によるものかは、考古天文学者のあいだで議論が続いている。
系譜と関係
ククルカンは、キチェ・マヤの創造神ククマッツ、アステカのケツァルコアトルと同じ羽毛の蛇の神格であり、これらとは習合の関係にある。ククマッツはポポル・ヴフにおいて、天の心フラカン、創造神テペウとともに世界を形づくる共同の創造者として現れる。ただし各文化における名も来歴も異なり、単純にひとつの神として語ることはできない。
文化的足跡
チチェン・イツァのエル・カスティーヨでは、春分・秋分の日に「降りてくる蛇」を見ようと、多くの人が集まる。
なおメソアメリカの先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。