ホルスの四人の息子
イムセティ · ハピ · ドゥアムトエフ
ミイラ化に際して取り出された内臓を納めるカノポス壺を守る四柱の神。イムセティ(人頭・肝臓)、ハピ(狒々・肺)、ドゥアムトエフ(山犬・胃)、ケベフセヌエフ(隼・腸)で、それぞれ四方と守護女神に対応する。
解説
概要
ホルスの四人の息子は、古代エジプトの宗教における四柱の神格の一群で、来世において死者を守ると信じられた。
エジプト史の第一中間期(前2181〜2055年頃)以降、イムセティ、ハピ、ドゥアムトエフ、ケベフセヌエフは、ミイラ化の過程で遺体から取り出された内臓を納める四つのカノポス壺ととりわけ結びつけられた。
職能
最も一般的には、イムセティが肝臓を、ハピが肺を、ドゥアムトエフが胃を、ケベフセヌエフが腸を守ったが、この配分はしばしば変異した。
四神はそれぞれ方位と、守護の女神とも結びつけられた。イムセティは南とイシス、ハピは北とネフティス、ドゥアムトエフは東とネイト、ケベフセヌエフは西とセルケトである。
図像
古王国から中王国にかけて、カノポス壺の蓋はすべて人頭で作られた。新王国の第十八王朝末期以降、四つの頭が区別されるようになる。
イムセティは人の頭、ハピは狒々の頭、ドゥアムトエフは山犬の頭、ケベフセヌエフは隼の頭を持つ。この四つの頭の組み合わせが、以後の定型となった。
なお、ハピはナイルの氾濫の神ハピとは別の神格である。名が同じであるため混同されるが、系統は異なる。
神話における位置
『ピラミッド・テキスト』において、四神はホルスの子として現れ、天の四方の柱を支える者、あるいは死んだ王が天へ昇る階梯となる者とされる。
オシリス神話の枠組みでは、アヌビスがミイラ化を司り、四人の息子が保存された内臓を守る。
図像と象徴
固有の図像として、カノポス壺の蓋と棺の側面の描写が多数残る。ただし本サイトは主画像を掲げない。
身体の分解と保存という観念が、この四神を規定する。死者の内臓は取り出され、別々の壺に納められ、それぞれ別の神が守る。身体を分けることが、身体を保つことになる。
関わる神格・伝承
ホルスの子。四方と四女神に対応。アヌビスとともに埋葬の神々をなす。
第二十一王朝以降、内臓は壺に納めず遺体に戻されるようになったが、四神の像は依然として副葬された。
文化的足跡
カノポス壺は、古代エジプトの葬送儀礼を象徴する遺物として、世界の博物館に多数収蔵されている。