エシュムン
エシュムン · エシュムーン · Eshmun
シドンの守護神である癒しのフェニキアの神で、名は「八番目」を意味する。ギリシア人はアスクレーピオスと同一視し、いずれも蛇の巻きつく杖を象徴とする。女神に追われて自ら去勢して死に、その熱で蘇って神になったと伝えられる。
解説
概要
エシュムン(エシュムーン)は、癒しのフェニキアの神であり、シドンの守護神であった。
その名は「八番目」を意味し、神シュドゥクの八番目の子という位置に言及するとみられる。
エシュムンは、少なくとも鉄器時代のシドンから知られ、ティルス、ベイルート、キュプロス、サルデーニャ、そしてカルタゴでも崇拝された。
癒しの神
ギリシアとの同一視。 ギリシア人はエシュムンをアスクレーピオスと同一視した。
いずれも癒しの神であり、蛇を象徴とする。
蛇と杖。 エシュムンの図像に、蛇の巻きつく杖が現れる。アスクレーピオスの杖と同じ形である。
医療の象徴としての蛇の杖が、どちらに由来するかは議論がある。
アストロノエの物語
ギリシア語で伝わる物語がある。
追われる若者。 エシュムンはベイルートの若い猟師であった。女神アストロノエが彼に恋し、追った。
自ら傷つける。 逃れられぬと知ったエシュムンは、斧で自らを去勢し、死んだ。
蘇生。 女神は嘆き、その熱で彼を蘇らせ、神とした。
死んで蘇る神。 アドーニス、ドゥムジと同じ型に属する。植物の枯死と再生に対応するとみられる。
ただしこの物語は、ヘレニズム期以降の記録による。フェニキア固有の伝承をどれほど伝えるかは不明である。
エシュムン神殿
シドン北方のブスタン・エシュ・シェイフに、エシュムンの神殿遺跡が残る。
前7世紀から。 前7世紀に建てられ、ローマ期まで用いられた。
水。 神殿には水路と水盤が設けられ、病者が沐浴した。癒しの神殿は、水と結びつく。
子供の像。 治癒を祈って、あるいは感謝して奉献された子供の石像が多数出土している。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、エシュムン神殿の遺構である。
関わる神格・伝承
シュドゥクの八番目の子。アスクレーピオスと同一視される。カルタゴではバアル・ハンモン、タニトと並ぶ。
文化的足跡
レバノンのエシュムン神殿は、フェニキアの神殿建築を今日に伝える数少ない遺構である。