バアル・ハンモン
バアル・ハンモン · バアル・ハモン · Baal Hammon
カルタゴとヌミディアの主神で、捲れた牡羊の角を持つ髭の老人として描かれる天候と稔りの神。タニトと対をなす。乳児の骨を納めた壺が並ぶ墓域トペトへの奉献が刻まれるが、子供の犠牲であったか自然死の埋葬かは今日も議論が続く。
解説
概要
バアル・ハンモン(「ハンモンの主」の意)は、ポエニ・ベルベルの習合的な神格であり、古代カルタゴとヌミディアの主神であった。
天候の神であり、植物の稔りを司ると考えられ、神々の王として尊ばれた。捲れた牡羊の角を持つ髭の老人として描かれた。
その祭祀の女性の伴侶はタニトであった。
バアル・ハンモンは北アフリカとカルタゴの——
なお本サイトの分類では、フェニキアの体系に含めて扱う。
カルタゴの主神
タニトとの対。 碑文において、「タニト・ペネ・バアル」(バアルの顔なるタニト)と「主バアル・ハンモン」が並べて記される。
タニトの名が先に来ることが多い。カルタゴにおいて、女神が男神より上位に置かれた可能性が指摘される。
牡羊の角。 捲れた角を持つ老人の姿で表される。
トペトと乳児の犠牲
カルタゴの遺跡から、「トペト」と呼ばれる墓域が発掘されている。
壺と碑。 焼かれた乳児と幼獣の骨を納めた壺が、多数埋葬されている。碑にはバアル・ハンモンとタニトへの奉献が刻まれる。
古代の記述。 ギリシア・ローマの著述家は、カルタゴ人が子供を火で焼いて神に捧げたと記す。
議論。 この記述の信頼性をめぐって、長い議論がある。
一方は、敵対する側による中傷の可能性を指摘する。他方は、考古学的な証拠がこれを裏づけるとする。
近年の分析。 遺骨の年齢分析から、死産児と新生児が多いことが示された。これを自然死した乳児の埋葬とみる説と、犠牲とみる説が対立している。
決着していない。 本項はこの議論を紹介するにとどめ、どちらかの立場をとらない。
モロクとの混同
旧約聖書の「モレク」(モロク)が、バアル・ハンモンを指すとする説がある。
別の説。 「モレク」が神名ではなく、供犠の種類を指す語であるとする説も有力である。
ローマにおける継承
カルタゴ滅亡後も、この神の信仰は続いた。
サトゥルヌス・アフリカヌス。 ローマ期の北アフリカにおいて、バアル・ハンモンはローマのサートゥルヌスと同一視され、広く祀られた。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、玉座のバアル・ハンモンのテラコッタ像である。
関わる神格・伝承
タニトと対をなす。サートゥルヌスと同一視される。
文化的足跡
カルタゴのトペトは、今日も発掘と議論の対象である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。