ケルキュオーン
ケルキュオン · Cercyon · Kerkyōn
エレウシースで旅人にレスリングを強いて殺していた男。テーセウスがアテーナイへ向かう途上で、技によってこれを殺した。レスリング技術の起源譚とされる。
解説
概要
ケルキュオーン(Κερκυών / Kerkyon)は、エレウシースの暴君で、通りがかる旅人にレスリングを強いて殺していた。アテーナイへ向かう若いテーセウスに投げ倒されて死んだ。同名の人物がアルカディアにもいる。
神話・物語
エレウシースのケルキュオーンは、ポセイドーンの子とも、ヘーパイストスの子とも、ブランコスとニュンペーのアルギオペーの子ともされる。
娘アロペーがポセイドーンとのあいだにひそかに男の子を産み、乳母に命じて捨てさせた。牝馬がその子に乳を与えているのを見つけた羊飼いたちが、子の着ていた立派な産着をめぐって争い、王のもとへ訴え出た。産着から真相を知ったケルキュオーンは娘を閉じ込めて殺し(生き埋めにしたともいう)、子を再び捨てさせた。子はまた牝馬に養われて生き延び、ヒッポトオーンと名づけられた。
テーセウスがトロイゼーンからアテーナイへ陸路をたどったとき、エレウシースでケルキュオーンに組み合いを挑まれ、力ではなく技で相手を高く持ち上げ、地に叩きつけて殺した(パウサニアース1.39.3)。これがレスリングの技の始まりとされた。王国はのちにヒッポトオーンに与えられた。
アルカディアのケルキュオーンは、アガメーデースの子で、ヒッポトオスの父とされる別人である(パウサニアース8.5.4)。
図像と象徴
本サイトの主画像は、アテーナイの画家アイソーンの赤絵式キュリクス(前430年頃、マドリード国立考古学博物館蔵)の一部で、テーセウスの功業を並べた図のなかのケルキュオーンとの組み打ちを描く。
テーセウスの功業を一つの杯に並べて描く作例では、ケルキュオーンとの組み打ちは、シニス、スケイローン、プロクルーステースらとの戦いと並んで定型の一場面となった。
系譜と関係
エレウシースのケルキュオーンは、娘アロペー、孫ヒッポトオーン。ヒッポトオーンはアテーナイの十部族の一つヒッポトオンティスの名祖となった。
文化的足跡
パウサニアースの時代にも、エレウシースに近い道の傍らに、アロペーの墓と、ケルキュオーンが旅人と組み打ちをしたという「ケルキュオーンの競技場」が示されていた。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。