ブリンギ
ブリンギリティ · 三本脚の聖仙 · 蜂の姿をとる者
シヴァのみを礼拝すると誓った聖仙。女神の分である肉と血を失って皮と骨だけとなり、第三の脚を与えられた者。
解説
概要
ブリンギ(Bhṛṅgī / भृङ्गी)は、シヴァのみを礼拝すると誓った聖仙であり、眷属の一人である。名は「蜂」を意味する。パールヴァティーを拝むことを拒んだために、女神の分である肉と血を失い、皮と骨だけの身となった。立てぬ身を憐れんだシヴァから第三の脚を与えられ、三本脚の痩せた姿で表される。
神話・物語
タミルの寺院伝承が伝える。彼はシヴァのみを礼拝すると誓っており、夫妻が並んで坐すときも、シヴァの周りだけを巡ろうとした。女神が夫の膝に坐して隙をなくすと、彼は蜂に姿を変えて二人のあいだを飛び抜け、シヴァのみを巡ったという。
怒った女神は苦行を積み、夫と一体となる恩寵を得た。こうして生じたのが半身が男、半身が女であるアルダナーリーシュヴァラの姿である。それでも彼は諦めず、甲虫となって像に穴を穿ち、男性の側だけを巡ろうとした。
ついに女神は、自らの分である肉と血を彼の身体から引き取った。残ったのは皮と骨だけであり、彼は立つことができない。憐れんだシヴァが第三の脚を与えたため、以後三本脚で立つことになった。
母から受け継ぐ肉と血、父から受け継ぐ皮と骨という古い身体観がこの説話の前提にある。女神を拒むことは、自らの身体の半ばを拒むことに等しいという主張である。
図像と象徴
痩せ衰えて肋の浮いた老人の姿で、三本の脚をもつ。しばしば太鼓を打ち、踊るナタラージャの傍らに配される。チョーラ朝の青銅像に優れた作例が残る。
象徴となるのは三本目の脚である。信仰の一途さが、そのまま身体の欠損として現れるという構図をもつ。
系譜と関係
シヴァの眷属の一人。ナンディンやヴィーラバドラらと並び、主の周囲を構成する。アルダナーリーシュヴァラの成立を語る説話の一方の当事者であり、その項と対で読まれる。
文化的足跡
南インドの寺院では、ナタラージャの群像に添えられて彼が刻まれることが多い。踊る神を見上げる痩せた三本脚の姿は、チョーラ朝の青銅工芸を代表する意匠の一つである。
説話としては、シヴァ派とシャークタ派の緊張を映すものとして論じられてきた。シヴァのみを至上とする立場が、女神を欠いては成り立たないことを、身体という具体の水準で示す寓話として読まれる。もっとも伝承はブリンギを否定的にのみ描くわけではなく、恩寵を受けて眷属に加えられた者として語る点も見落とせない。