アスモデウス
アスモデウス · アシュメダイ · アスモダイ
ソロモン伝説における悪魔の王で情欲と結びつく。名はゾロアスター教の憤怒の悪魔アエーシュマ・ダエーワに由来する。『トビト記』では七人の夫を殺し、ソロモン伝説では神殿建設に使役されたのち王の姿に化けて王位を奪った。
解説
概要
アスモデウス(ヘブライ語ではアシュメダイ)は、ユダヤの伝承に現れる悪魔の王で、情欲と結びつけられる。外典『トビト記』では、娘サラに恋をして、その夫を初夜ごとに七人まで殺した悪魔として登場する。タルムードの物語では悪霊シェディームの王として、神殿を建てるソロモン王に捕らえられ、のちにその王位を奪う。名は、ゾロアスター教の憤怒の悪魔アエーシュマに由来するとする説が有力である。
なお本サイトの分類では、アブラハムの体系に含めて扱う。
イランから来た悪魔
「アシュメダイ」の名は、アヴェスター語の「アエーシュマ・ダエーワ」(憤怒の悪魔)に由来するとする説が有力である。ペルシアの支配のもとにあった時代のユダヤ教に、ゾロアスター教の悪魔の名が入ってきたのである。第二神殿時代のユダヤ教に見られる、善と悪の二元論的な考えや、天使の階級、終末論といった要素にも、イランの宗教の影響が指摘されてきた。ベルゼブブやアスタロトがカナンの神々に由来するのに対し、アスモデウスはイランに由来するのである。
『トビト記』
外典『トビト記』で、アスモデウスはサラという娘に恋をし、サラが結婚するたびに、その初夜に夫を殺した。七人の夫が命を落とした。八人目の夫となるトビアに、天使ラファエルが助言を与え、トビアが魚の心臓と肝臓を焚いて煙を立てると、アスモデウスは逃げ出した。ラファエルは後を追い、上エジプトでアスモデウスを縛り上げたという。
ソロモンとアスモデウス
『ソロモンの遺言』やタルムードは、ソロモン王とアスモデウスの物語を伝えている。ソロモンは神殿を建てるにあたって、鉄の道具を用いてはならなかった。そこで石を切る伝説の虫(あるいは石)シャミールを手に入れるため、アスモデウスを捕らえた。酒を飲ませて酔わせ、神の名を刻んだ鎖で縛ったのである。
のちにソロモンがアスモデウスの力を試そうとしたとき、悪魔は王を遠くへ投げ飛ばし、王の姿に化けて王位を奪った。ソロモンは乞食となってさまよい、やがて王位を取り戻したという。悪魔を使った王が、その悪魔に地位を奪われる。王の思い上がりを戒める物語である。
魔術書のアスモダイ
17世紀の魔術書『ソロモンの小さな鍵』では、アスモダイは七十二柱の悪魔の第三十二位に置かれている。牡牛と人と牡羊の三つの頭に蛇の尾を持ち、竜に乗る姿で描かれ、算術や天文学、幾何学、手工芸を教え、隠された宝のありかを示すとされる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、アスモデウスの図である。
関わる神格・伝承
アエーシュマに由来し、ソロモンに捕らえられ、『トビト記』でラファエルに追われた。
文化的足跡
ルサージュの小説『びっこの悪魔』(1707年)で、悪魔アスモデが家々の屋根を取り去って人々の暮らしをのぞかせる場面は、よく知られている。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。