天使の階級
天使の階級 · 天上位階 · ケルビム
天使を複数の位に分けて秩序づける体系。ケルビム・セラフィム・オファニムは旧約聖書に現れ、オファンは目に満ちた車輪という器物である。偽ディオニュシオスの九階級は新プラトン主義に基づき、聖書の抽象名詞を天使の位として読み替えた。
解説
概要
天使の階級は、天使を複数の位に分けて秩序づける体系である。
ユダヤ教とキリスト教のそれぞれに異なる体系があり、いずれも聖書に散在する天使の名を集めて整理したものである。
なお本サイトの分類では、アブラハムの体系に含めて扱う。個々の階級に固有の伝承が乏しいため、群記事とする。
聖書の天使
旧約聖書に、複数の種類の天使が現れる。
ケルビム。 『創世記』3章24節、エデンの東に置かれて命の木への道を守る。契約の箱の上に、その像が置かれた。
『エゼキエル書』1章の四つの顔(人・獅子・牛・鷲)を持つ生き物が、ケルビムと同定される。
メソポタミアの影響。 人面有翼牡牛の守護像(ラマッス)との関係が指摘される。門を守る有翼の存在という点が共通する。
セラフィム。 『イザヤ書』6章、六つの翼を持ち、「聖なるかな」と唱える。
「サーラフ」は「燃える」を意味し、また「燃える蛇」をも意味する。『民数記』21章の青銅の蛇と同語である。
オファニム。 『エゼキエル書』1章15〜21節の、目に満ちた車輪である。
「オファン」は「車輪」を意味する。ガルガリーム(球、旋風)とも呼ばれる。
車輪が天使である。 器物が天使の一階級となっている。
偽ディオニュシオスの九階級
5〜6世紀の『天上位階論』(偽ディオニュシオス・アレオパギテス)が、キリスト教の標準的な体系を確立した。
三層九階級。
第一位階——セラフィム、ケルビム、玉座(トロノイ)。
第二位階——主天使(キュリオテーテス)、力天使(デュナメイス)、能天使(エクスーシアイ)。
第三位階——権天使(アルカイ)、大天使(アルカンゲロイ)、天使(アンゲロイ)。
新プラトン主義。 この体系は、新プラトン主義の流出論に基づく。神から遠ざかるにつれて位が下がる。
聖書の語の再配置。 パウロ書簡に現れる「支配、権威、力、主権」といった語が、天使の階級として読み替えられた。
抽象名詞が天使になる。 「玉座」「主権」といった語が、それぞれ天使の位となる。
ユダヤ教の体系
マイモニデス。 『ミシュネー・トーラー』において、十の階級を挙げる。
ハヨト・ハ・コデシュ、オファニム、エルエリム、ハシュマリム、セラフィム、マラヒム、エロヒム、ベネイ・エロヒム、ケルビム、イシム。
十。 カバラーのセフィロトの十と対応させる意図がある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、エゼキエルの幻視のメルカバー(神の戦車)を描いた図である。
関わる神格・伝承
ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルは大天使にあたる。
文化的足跡
ダンテ『神曲』天国篇は、偽ディオニュシオスの九階級を天球の構造に対応させた。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。