テウクロス
テウケル · テウセル · Teucer
ギリシア神話の人物の名。トローアスの最初の王でトロイア人の名祖、およびテラモーンの子で大アイアースの異母弟、ギリシア軍随一の弓の名手が知られる。後者はキュプロスにサラミースを建てた。
解説
概要
テウクロス(Τεῦκρος)は、ギリシア神話の人物の名である。主として二人が知られる。
同名の人物たち
スカマンドロスの子。 トローアス地方の河神スカマンドロスとニュンペーのイーダイアーの子で、カリロエーと兄弟。娘バテイアの父。トローアスの最初の王で、トロイア人はこの王にちなんでテウクロイともいわれる。娘バテイアはサモトラケー島から渡ってきたダルダノスの妻となった。
ウェルギリウスによれば、テウクロスはクレータ島の出身で、トローアスに来て最初の王となった。トローアスのイーダ山の名はクレータのイーダ山に由来するという。ストラボーンによれば、クレータから来たテウクロイたちは「大地の子らに襲われた場所に住め」という神託を受け、夜にハマクシトスで鼠の大群に襲われたため、これを大地の子と解してそこに住んだ。アポローン・スミンテウス(「鼠のアポローン」)の起源とされる。
テラモーンの子。 サラミース王テラモーンと、トロイア王ラーオメドーンの娘ヘーシオネーの子で、大アイアースの異母弟。ギリシア軍随一の弓の名手として、『イーリアス』で兄の大楯の陰から矢を放つ。
アイアースの自害ののち帰国したが、父テラモーンは兄を守らなかったことを責めて追放した。テウクロスはキュプロス島へ渡り、新しいサラミースを建設して王となった。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
第二のテウクロスは、トロイア王家の血を引きながらギリシア方で戦うという位置にある。母ヘーシオネーはプリアモスの姉妹であり、したがってヘクトールの従兄弟にあたる。敵の従兄弟として弓を引く。
兄の楯の陰から射るという戦い方は、『イーリアス』第8巻に描かれる。大楯を持つ兄と弓を持つ弟の連携が、この兄弟を規定している。
関わる神格・伝承
第一の娘はバテイア、婿はダルダノス。第二の父はテラモーン、兄はアイアース。
トロイア人がテウクロイと呼ばれること、そしてギリシア方の弓の名手が同じ名を持つこと——同じ名がトロイアとギリシアの双方に配されている。
文化的足跡
ソポクレース『アイアース』の後半で、テウクロスは兄の埋葬をめぐってメネラーオスとアガメムノーンに抗う。埋葬の権利という主題を担う役として、悲劇の重要人物である。
キュプロス島のサラミースは歴史上の都市であり、その創建者としてこの人物が記憶された。