サオシュヤント
ソーシャンス · サオシュヤンス · アストワト・ウルタ
ゾロアスター教で終末の刷新をもたらす救世主。名は「益をもたらす者」を意味する。湖に保たれたザラスシュトラの種から、処女によって生まれると伝えられる。
解説
概要
サオシュヤント(アヴェスター語 saošiiaṇt)は、「益をもたらす者」を意味する語である。動詞語根 sū-/sau- の未来分詞に由来し、印欧祖語の *ḱewh₁-「膨らむ」に遡る。この語根はやがて「役立つ」「益を生む」の意を帯び、その延長でこの名が理解された。中期ペルシア語ではソーシャンスと縮まる。
世界の刷新フラショー・クルティをもたらし、悪を最終的に滅ぼす救世主の名として知られるが、この用法は最初からあったものではない。
神話・物語
『ガーサー』において、この語はまだ固有名ではない。ザラスシュトラ自身の使命と、人類に益をもたらすその共同体を指す普通名詞である。若いアヴェスターでも、宗教指導者一般を指して用いられることがある。
固有名として明確に現れるのは『ヤシュト』13.129で、そこでは別名アストワト・ウルタ(「義を体現する者」)と結ばれる。同じ箇所は語源の説明も与えている——彼が「サオシュヤント」と呼ばれるのは、あらゆる物質の生を益する(sāwayāt)からである、と。名の意味を物語のなかで説き明かす、経典自身による注釈である。
役割を述べるのは『ヤシュト』19.88–96である。彼はフラショー・クルティを成し遂げ、世界を完全で不死のものとし、真理アシャの対極である虚偽ドゥルジュは消え去る。母はウィースパ・タウルワイリー。カンサオヤ湖から現れ、かつてイランの英雄と王が魔に対して用いたのと同じ武器ウルスラグナを携える。ハルワタート、アムルタートらが伴となる。
9世紀から12世紀の文献は、これを三人の救世主に展開する。世界の最後の三千年、その千年紀ごとの終わりに一人ずつ現れ、順に(フ)シェーダル、(フ)シェーダルマー、そしてサオシュヤント本人であるとされた。三人はいずれも処女から生まれる。湖で沐浴した乙女が、そこに奇跡的に保たれていたザラスシュトラの種によって身ごもるという筋である。九万九千九百九十九のフラワシがその種を守るとされたのは、この物語の前提をなす。
図像と象徴
この救世主を表した図像は伝わらない。本サイトが主画像を掲げないのはこのためである。まだ来ていない者を描く形式が、この伝統には育たなかったということでもある。
系譜と関係
母はウィースパ・タウルワイリー、父はザラスシュトラ——ただし種を通じてであり、直接の親子ではない。伴となるのはハルワタート、アムルタート、そして義者ドゥーラオシャらである。
文化的足跡
湖に保たれた種、処女からの誕生、終末における世界の刷新——これらの要素と西アジアの終末思想との関係は、19世紀以来くりかえし論じられてきた。ゾロアスター教の終末観がユダヤ教やキリスト教の思想に影響したとする議論には長い蓄積があるが、影響の方向と時期については今も一致を見ていない。年代の確定しにくいアヴェスター文献の性格が、この議論を難しくしている。