アイギアレイア
アイギアレー · アイギアリア · アドラースティーネー
アドラーストスの娘でディオメーデースの妻。夫の留守中に不貞を働き、帰還した夫をアルゴスから追い出した。ディオメーデースがイタリアへ渡る原因となった。
解説
概要
アイギアレイア(Αἰγιάλεια、アイギアレー)は、ギリシア神話の女性である。アルゴス王アドラーストスとアムピテアーの娘で、ディオメーデースの妻にあたる。
兄弟姉妹にアイギアレウス、キュアニッポス、アルゲイアー、デーイピュレーがいる。姉デーイピュレーはディオメーデースの母であるから、この女性は夫の従妹にあたる。
アドラーストスの子であることから、アドラースティーネーの添え名でも呼ばれる。
神話・物語
夫ディオメーデースがトロイア戦争で留守にしているあいだ、ステネロスの子コメーテースと通じたと伝えられる。ヒッポリュトスをはじめ複数の恋人があったとする資料もある。
原因の説明は分かれる。ナウプリオスに唆されたとするもの、そしてトロイア戦争でディオメーデースに傷つけられたアプロディーテーの報復とするものである。後者はディオメーデース自身の解釈として伝えられる。
ディクテュス・クレテンシスによれば、アイギアレイアはクリュタイムネーストラーと同じく、偽りの知らせによってこの行いに導かれた。ディオメーデースがトロイアの女を妻として連れ帰るという報せである。アルゴスに着いた夫を、彼女は追い出した。
ついに命まで狙われるに至って、ディオメーデースはイタリアへ逃れた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
トロイアから帰還した英雄が妻の不貞に遭うという型が、この物語の骨格である。アガメムノーンとクリュタイムネーストラー、そしてこの二人。帰還譚(ノストイ)において、勝利者を待っているのは家庭の崩壊である。
原因が神の報復として説明される点も見逃せない。ディオメーデースは戦場でアプロディーテーの手を傷つけた。愛の女神を傷つけた者が、愛によって国を追われる。因果の対称性が、この筋を貫いている。
系譜と関係
父はアドラーストス、母はアムピテアー。夫はディオメーデース。
アドラーストスの娘たちは、いずれもテーバイ攻めの七将をめぐる物語に配される。アルゲイアーはポリュネイケースに、デーイピュレーはテューデウスに嫁いだ。アイギアレイアはその次の世代——エピゴノイのディオメーデース——の妻である。三姉妹が二世代にわたってテーバイ戦争の系譜を担っている。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。ディオメーデースがなぜイタリアへ渡ったのかを説明する筋として言及される程度である。
しかしイタリア南部のディオメーデース伝説——アドリア海沿岸の都市の創建者とする伝え——は、この帰還の失敗を前提としている。妻に追われた英雄が、西へ渡って新しい土地の祖になる。