ザグレウス
ザグレウス · Zagreus
古くは冥界に関わる神の名で、のちにオルペウス教の伝える、ゼウスとペルセポネーの子でティーターンに引き裂かれ食べられたディオニューソスの前身の名とされた。心臓から再生したという。灰から人間が生まれたという説は6世紀のオリュンピオドーロスにのみ明記される。
解説
概要
ザグレウス(Ζαγρεύς)は、ギリシア神話の神で、のちにオルペウス教の伝える、ティーターンに引き裂かれたディオニューソスの前身の名として知られるようになった。この子の父はゼウス、母はペルセポネー(一説にデーメーテール)とされる。
最古の言及である叙事詩『アルクマイオーニス』の断片は、ザグレウスをガイアと並べて「すべての神々のうち最も高い者」と呼ぶ。アイスキュロスの断片では、ハーデースの子、あるいはハーデース自身の名として現れる。
神話・物語
ゼウスは蛇に化けてペルセポネーに近づき、交わって子をもうけた。ゼウスはこの子を、全宇宙を継ぐべき存在として寵愛した。
これに嫉妬したヘーラーは、ティーターン族を子のもとに送り込んだ。子はさまざまな動物に変身して逃れたが、牛になったとき捕らえられて殺され、引き裂かれ、ティーターンに煮て食べられた。
心臓だけはアテーナーによって救い出され、ゼウスのもとへ届けられた。ゼウスはこの心臓から、セメレーを母として、ディオニューソスを新たに生まれさせたという。ゼウスはティーターン族を雷霆で焼いた。
名と伝承の成り立ち
現存するオルペウス教の資料そのものは、引き裂かれた子を「ザグレウス」とは呼ばない。この子をザグレウスとする確かな最初の例はプルタルコスで、5世紀のノンノス『ディオニューソス譚』が「最初のディオニューソス、ザグレウス」として物語を詳しく語る。
焼かれたティーターンの煤から人間が生まれ、ゆえに人の身体はディオニューソスに属するという説は、6世紀の新プラトン主義者オリュンピオドーロスにだけ明記される。これをオルペウス教の古い教えとみる研究者(ベルナベ)と、オリュンピオドーロスが自殺を戒める議論のために作った新説とみる研究者(リンフォース、エドモンズ)とがある。
名の語源には、獲物を捕らえる落とし穴を意味する zagrē に結ぶ説(ウェスト)などがある。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
系譜と関係
父はゼウス、母はペルセポネー。ディオニューソスの前身とされる。
文化的足跡
ニーチェ『悲劇の誕生』は、ティーターンに引き裂かれるディオニューソス・ザグレウスの神話に触れている。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。