シャーカンバリー
シャターークシー · 百の眼をもつ者 · ドゥルガーの一相
野菜と草木を身にまとう女神。百年に及ぶ旱魃のとき、自らの身体から食物を生じさせて人々を養ったと語られている女神。
解説
概要
シャーカンバリー(Śākambharī / शाकम्भरी)は、野菜と草木を身にまとう女神である。名は「野菜(シャーカ)を保つ者」を意味する。百年に及ぶ旱魃のとき、自らの身体から食物を生じさせて人々を養ったとされる。ドゥルガーの一相と理解され、飢えを鎮める働きによって祀られる。
神話・物語
『デーヴィー・マーハートミヤ』第十一章が伝える。魔神を討ったのちの女神は、神々に向かって自らの未来の顕現を予告した。そのなかに、百年のあいだ雨が降らず地上が渇いたとき、自らが千の眼をもつ姿で現れ、身体から生じた野菜と果実によって世界を養うであろうという一節がある。そのとき人々は自分をシャーカンバリーと呼ぶであろう、と告げられる。
同じ場面で、彼女はドゥルガマという魔神を討つことも予告する。この魔神はヴェーダを奪って祭祀を絶やし、そのために雨が止んだとされる。ヴェーダの喪失が旱魃を招き、女神がこれを回復して食物をもたらすという因果で語られる。
『デーヴィー・バーガヴァタ・プラーナ』はこの説話を拡張し、女神が涙を流して大地を潤し、身体から野菜を生じさせたと記す。千の眼をもつゆえにシャターークシー(百の眼をもつ者)とも呼ばれる。
図像と象徴
四臂ないし多臂で、花、果実、野菜、草の束を持つ姿で描かれる。矢と弓、蓮華を執る形もある。乗騎は獅子。ドゥルガーの図像を基礎としながら、武器の代わりに食物を手にする点で区別される。
象徴となるのは野菜そのものである。討つことによってではなく、養うことによって世界を救う女神という位置づけを担っている。
系譜と関係
ドゥルガーの一相とされ、パールヴァティーの顕現と理解される。『デーヴィー・マーハートミヤ』における未来の顕現の予告は、マヒシャースラやシュンバとニシュンバとの戦いのあとに置かれており、戦う女神から養う女神への移行として読まれてきた。
文化的足跡
ウッタル・プラデーシュ州サハーランプル近郊と、ラージャスターン州シーカル近郊に主要な寺院がある。いずれもシャーカンバリー・デーヴィーの名で知られ、ラージャスターンのチャウハーン朝は彼女を氏族の守護神としていた。
シャーカンバリー・ナヴァラートリと呼ばれる祭が、プシュヤ月の満月に至る九夜にわたって営まれる。この期間には野菜と果実が供えられ、参拝者に分け与えられる。飢饉の記憶と結びついた祭であり、食物を分かつという実践が信仰の中心をなす。