シャイ
シャイ · サイ · シャイト
エジプトの運命の神格化で、名は「定められたもの」を意味する。各人の生の長さを定め、誕生から死まで付き添い、死者の審判で証人となる。ただしその運命は絶対ではなく変わりうるとされた。
解説
概要
シャイ(Shai、サイ、ギリシア語プサイス)は、エジプト神話における運命の観念の神格化であった。
概念としては、一方の性を他方に結びつける特段の理由がないため、シャイはより一般的な男性としての理解ではなく、女性とみなされることもあった。その場合シャイトと呼ばれた——単にその名の女性形である。
その名はその働きを反映し、「(定められた)もの」を意味する。
職能
エジプト人は、シャイが各人の生の長さを定め、誕生とともに生まれてその人に付き添うと信じた。ローマのゲニウスと同じく、個人に固有の運命の霊である。
死者の審判において、シャイは死者とともに現れ、その生涯を証言する。『死者の書』第百二十五章の心臓の計量の場面において、シャイは天秤の傍らに立ち、レネヌテト(養育の女神)、メスケネト(出産の女神)とともに、死者の生涯を見届けた者として証人となる。
生まれるとき(メスケネト)、育つとき(レネヌテト)、そして生涯(シャイ)——三柱の神が人の一生を分担する。
運命の観念
エジプトにおける運命は、ギリシアのモイラのような不可避の力とは異なる。シャイが定めた生の長さは、神々の意志と本人の行為によって変わりうる。とりわけプトレマイオス時代以降、セラピスがシャイを支配し、運命を変える力を持つとされた。
「運命を定める者」であると同時に、その運命が絶対でないという点が、エジプトの運命観の特徴である。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。人の姿、あるいは蛇の姿で表される。
蛇の姿は、レネヌテトが蛇の女神であることとの関連による。運命と養育が、蛇という同じ形で表される。
関わる神格・伝承
レネヌテト、メスケネトとともに人の一生を司る。セラピスに支配される。ギリシア人はアガトス・ダイモーンと同一視した。
文化的足跡
エジプトの運命観は、ヘレニズム期にギリシアの観念と混じり、グノーシス主義における運命論にも影響したとされる。