ゲニウス
ゲニウス · 守護霊 · ゲニウス・ロキ
すべての人・場所・物に宿る神性の個別の現れ。各人に誕生から死まで付き従い、家長のゲニウスは家の祭壇で祀られ、皇帝のゲニウスへの誓約が皇帝崇拝を成立させた。「天才」「ゲニウス・ロキ」の語源。
解説
概要
ローマの宗教において、ゲニウス(genius、複数形ゲニイー)は、すべての人、場所、物に存在する一般的な神性の個別の現れである。守護天使とよく似て、ゲニウスは各人に誕生の時から死の日まで付き従う。女性にはユーノーの霊が各人に付き添った。
性質
各々の場所にはゲニウス(ゲニウス・ロキ)があり、火山のような強力な物にもあった。この概念は特定のものにまで及んだ。劇場の、葡萄畑の、祭のゲニウスがあり、それぞれが上演を成功させ、葡萄を育て、祝祭を成功させた。
ローマ人の心において、あらゆる活動の成功に関わる神の力の名を知り、これを宥めることはきわめて重要であった。
家長のゲニウス
家父長(パテル・ファミリアース)のゲニウスは、家の祭壇(ララリウム)でラレースとともに祀られた。家長の誕生日にはそのゲニウスに供物が捧げられ、家族と奴隷が祝った。家長のゲニウスは、家の存続の力そのものであった。
帝政期には皇帝のゲニウスが公的に崇拝された。皇帝自身を神として祀ることを避けつつ、そのゲニウスに誓い供物を捧げることで、皇帝崇拝が成立した。ゲニウス・アウグスティへの誓約は、帝国の臣民の忠誠の表現であった。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、鏡とタンバリンを持つ女と翼のあるゲニウスを描いた図である(リヨン美術館蔵)。
ゲニウスはトガをまとい頭を覆って供物を捧げる男の姿、あるいは翼のある青年の姿で表された。ゲニウス・ロキは蛇の姿で表されることが多く、ポンペイの家の祭壇の壁画に蛇が描かれるのはこのためである。
個人と場所にそれぞれ神があるという観念が、この神格を規定する。ローマの宗教において神性は遍在し、あらゆるものにその固有の神的な力が宿る。ゲニウスはその最も日常的な現れである。
関わる神格・伝承
ラレース、ペナーテースとともに家の神々をなす。女性のゲニウスはユーノー。
文化的足跡
「ゲニウス」は近世以降「天才」を意味する語になった。個人に宿る神的な力という観念が、天賦の才能という意味に転じたのである。英語の genius、フランス語の génie はこの語に由来する。
「ゲニウス・ロキ」(土地の霊)は、建築と景観の議論において今日も用いられる。