ゲニウス
ゲニウス · 守護霊 · ゲニウス・ロキ
ローマの宗教で、一人ひとりの人・場所・物に宿る神性の現れ。男には誕生から死までゲニウスが付き従い、女の守護霊はユーノーと呼ばれた。家のゲニウスはララリウムでラレースとともに祀られ、アウグストゥスのゲニウスは食事ごとに献酒を受けた。
解説
概要
ゲニウス(genius、複数形ゲニイー)は、ローマの宗教で、一人ひとりの人、場所、物に宿る神性の個別の現れである。守護天使に似て、男は誕生から死まで自分のゲニウスに付き添われた。女の場合、その生む力を表す守護霊はユーノーと呼ばれた。
名は「生む、生じさせる」を意味する印欧語の語根に遡り、ラテン語の動詞 gignō(生む)と同じ根をもつ。
信仰
ゲニウスは人だけでなく、場所にも宿った(ゲニウス・ロキ、土地の霊)。劇場や葡萄畑、祭にもそれぞれのゲニウスがあると考えられた。

家の祭壇ララリウムには、家のゲニウスがラレースとともに祀られた。ポンペイなどのララリウムの壁画では、中央に家のゲニウス(あるいはゲニウスとユーノー)が立ち、その両脇に二人のラレースが付き添い、手前に一匹か二匹の蛇が描かれる。カンパーニアやカラブリアでは、家に棲む吉兆の蛇がゲニウスと結びつけられていた。
アクティウムの海戦ののちオクタウィアヌスがローマに戻ると、元老院は宴の際に彼のゲニウスに献酒することを決め、皇帝のゲニウスは家ごとの食事のたびに祀られるようになった。

図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ナポリ国立考古学博物館にあるポンペイのララリウムの壁画(第3様式)である。上段では、二人のラレースのあいだで、ゲニウスが祭壇に供物を捧げ、笛吹きや、豚を祭壇へ引く従者が付き添う。下段には、果物と卵を載せた祭壇の両側に二匹の蛇が描かれている。
系譜と関係
ラレース、ペナーテースとともに家の神々をなす。女のゲニウスにあたるのはユーノーである。
文化的足跡
英語の genius、フランス語の génie はこの語に由来し、のちに天賦の才能を意味するようになった。「ゲニウス・ロキ」(土地の霊)の語は、建築や景観の議論で今日も用いられる。