三清
さんせい · 三清境 · Three Pure Ones
道教の最高神格である三柱——元始天尊・霊宝天尊・道徳天尊。それぞれ玉清境・上清境・太清境に住む。三洞(三つの経典系統)の説き手として六朝期に成立した。抽象的な最高神であり、実際に祈られるのは玉皇大帝である。
解説
概要
三清(さんせい)は、道教で最も高い位に置かれる三柱の神である。宇宙の始まりそのものを神格化した元始天尊、道の働きを神格化した霊宝天尊(太上道君)、老子を神格化した道徳天尊(太上老君)をいう。三柱はそれぞれ玉清境・上清境・太清境という最上の天に住むとされ、この三つの天も三清と呼ばれる。
神話・物語
三清は、物語から生まれた神々というより、教理の整理から生まれた神々である。六朝期の道教は経典を三つの系統(三洞)に分けた。上清派の経典を中心とする洞真、霊宝経を中心とする洞玄、三皇文を中心とする洞神である。三清はこの三洞の経典をそれぞれ説いた神として位置づけられ、元始天尊が洞真、霊宝天尊が洞玄、道徳天尊が洞神に当てられた。経典の分類が先にあり、その説き手として神が置かれたことになる。
6世紀初めに陶弘景がまとめた『真霊位業図』は、神仙を七つの階層に並べ、その最上位に元始天尊を置いた。三柱が一組の最高神として定着するのは唐から宋にかけてである。仏教の三身(法身・報身・応身)の考え方の影響を指摘する説もある。
宇宙の根源に近いこの三柱は、人の願いを直接聞き届ける神としては意識されにくい。天界の統治者として民間で広く祈られるのは玉皇大帝で、三清の下に玉皇大帝らの四御が置かれる。
図像と象徴
三柱が並んで座る姿で表され、中央に元始天尊、その左右に霊宝天尊と道徳天尊が座る。元始天尊は珠、霊宝天尊は如意、道徳天尊は扇を持つことが多く、持物で見分けられる。本サイトの主画像は、E・T・C・ワーナー『中国の神話と伝説』(1922年)に収められた、中国の画工による三清の図である。
山西省芮城の永楽宮の三清殿には、元代(1325年)に描かれた壁画「朝元図」が残る。殿内の三清の像はすでに失われているが、四方の壁いっぱいに二百数十体の神々が列をなし、中央の三清に向かって朝拝する。三清を頂点とする神々の秩序そのものを、壁面に描き出した作例である。
関わる神格・伝承
元始天尊、霊宝天尊、道徳天尊の三柱。その下に玉皇大帝を含む四御が置かれる。
文化的足跡
中国本土・台湾・香港・東南アジアの道観には、今日も三清を祀る殿閣が設けられる。北京の白雲観の三清閣や、南宋の1179年に建てられた蘇州玄妙観の三清殿がよく知られる。
なお道教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。