玉皇大帝
玉皇上帝 · 玉帝 · 天帝
道教の最高神。天界を統べる天上の皇帝として、神々と人の世を治める。民間信仰では宇宙の主宰者・天帝そのものと仰がれた。
解説
概要
玉皇大帝(ぎょくこうたいてい、Yùhuáng Dàdì)は、道教の神々の頂点に立つ最高神である。天界を統べ、神・仙・人・鬼のことごとくを支配する天上の皇帝として崇められ、しばしば単に「天帝」「老天爺(ラオティエンイエ)」とも呼ばれた。地上の皇帝が人の世を治めるように、玉皇大帝は宇宙の官僚機構=天廷(てんてい)の頂点にあって万物を主宰する天界の主宰者であり、民間信仰における事実上の主神である。
神話・物語
玉皇大帝は、天地開闢そのものを行う創世神ではなく、成った世界を統べる天の君主として位置づけられる。その神格が体系的に整うのは道教教団の展開した宋代以降で、歴代の王朝はこれに壮麗な尊号を奉った。民間では、無数の下位神——竜王・城隍神(じょうこうしん)・竈神(かまどがみ)ら——を配下の官僚とみなし、竈神が年の暮れに天へ昇って各家の一年の善悪を玉皇大帝に報告する、という信仰が広く行われた。旧暦正月九日は、その誕辰(たんしん=誕生日)として祝われる。小説『西遊記』では、天宮を騒がせた孫悟空を持てあました玉皇大帝が、ついに釈迦如来に助けを求める場面が描かれ、天界の秩序の主でありながら暴れる霊猴を自力で抑えきれぬさまが、その権威と限界をあわせて印象づける。
図像と象徴
玉皇大帝は、地上の皇帝の姿を写して描かれる。冕冠(べんかん)を戴き、玉笏(ぎょくしゃく)を執り、龍を刺繍した袞衣(こんい)をまとって玉座に坐す、荘厳な帝王像が典型である。その像容は、人間の天子の礼制をそのまま天上に投影したもので、天の秩序を地の官制になぞらえる中国的な世界観をよく表す。宮観(道教寺院)では中央の主尊として祀られ、両脇に天王や侍臣を従えた図像も多い。作者を伝えぬ絹本着色の帝王図は、その代表的な作例である。
系譜と関係
玉皇大帝は天廷の頂点にあって、無数の神々を官僚として従える。后妃には、西王母と習合した女神・王母娘娘(おうぼにゃんにゃん)を配する伝えもある。地上の官界を映した天上の位階秩序の中心に置かれる点に、この神の特質がある。
国家祭祀の側では、天そのものを神格化した昊天上帝が至高神の座にあった。唐代の道教経典が玉皇に「昊天金闕至尊玉皇上帝」の号を与え、宋の徽宗が政和六年(1116年)に両者を一体化したが、この習合は国家祭祀に定着せず、明清の祭天は昊天上帝を、民間は玉皇大帝を仰ぐという棲み分けに落ち着いた。
文化的足跡
玉皇大帝への信仰は東アジアに広く根づき、廟や祭礼、正月九日に天を拝する「拝天公(はいてんこう)」などの習俗として今日まで続く。天を統べる至高の帝という主題は、演劇や現代の創作にもしばしば取り上げられている。