ラームデーヴ・ピール
ラームデーヴ・ピール · ラームデーオ · ラームシャー・ピール
14世紀ラージャスターンの首長で、クリシュナの化身として神格化された。三十三歳で生きたまま墓に入ったとされる。メッカから来た五人のピールに奇跡を示して「ピールのなかのピール」と認められ、ムスリムにも崇敬される。カースト差別を否定したとされ、被差別層に篤く信仰されている。
解説
概要
ラームデーヴ(ラームデーオ・ピールとも)は、14世紀のラージャスターンに実在したとされる首長で、死後に神として祀られるようになった。クリシュナの化身とされ、グジャラート、ラージャスターン、マディヤ・プラデーシュで篤く信仰されている。ムスリムの聖者を指す「ピール」の称号を持ち、ヒンドゥーだけでなくムスリムからも敬われている。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
神になった首長
ラームデーヴは、ポーカラン地方のラージプートの首長で、1352年から1385年まで生きたとされる。病を癒し、死者を蘇らせるなどの奇跡を行ったと伝えられ、三十三歳で、自ら望んで生きたまま墓(サマーディ)に入ったという。その墓所のあるラームデーオラーの村は、今日の巡礼地となっている。ラージャスターンのカルニ・マーターと同じく、実在の人物が比較的新しい時代に神となった例である。
ピールのなかのピール
「ピール」は、スーフィーの聖者を指すペルシア語の称号である。伝承によれば、メッカから五人のピールがラームデーヴを試しにやって来た。自分たちの器を持ってこなかったことを嘆くピールたちのために、ラームデーヴは奇跡によってメッカから彼らの器を取り寄せた。五人は驚き、彼を「ピールのなかのピール」と認めたという。ヒンドゥーの神が、ムスリムの称号で呼ばれるに至った由来である。
被差別の人々の神
ラームデーヴは、カーストによる差別を否定したと伝えられる。不可触民とされたメグワール共同体の女性ダーリーバーイーを弟子とし、今日も、とりわけダリト(被差別層)の人々のあいだで篤く信仰されている。被差別の人々に支持される神という点では、南インドのレーヌカー(イェッラマー)とも通じる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ラームデーヴを描いた図である。白馬に乗り、旗を掲げた姿で表される。
関わる神格・伝承
クリシュナの化身とされ、シンドのジューレーラールやベンガルのボンビビとともに、宗教の境をまたいで敬われる神格の系列をなす。
ヒンドゥーとムスリムの双方に祀られる英雄には、蛇の咬傷から守るゴーガージーもいる。
文化的足跡
ラームデーオラーの祭には、毎年数十万人の巡礼者が集まる。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。