ボンビビ
ボンビビ · ボン・ビビ · Bonbibi
スンダルバンスの森の守護霊で、ヒンドゥーとムスリムの双方に礼拝される。メディナから遣わされたとされ名はペルシア語だが、像はヒンドゥーの様式で虎を伴う。虎の主ダクシン・ラーイと森を分け、人が必要な分だけ取る掟を定めた。
解説
概要
ボンビビ(「森の夫人」)は、インドとバングラデシュにまたがる大湿地帯スンダルバンスで、ヒンドゥーとムスリムの双方から敬われる森の守り手の女神である。蜂蜜を採る人々や木こりは、森に入る前に、虎に襲われないようボンビビに祈る。ムスリムの言葉で呼ばれ、ヒンドゥーの女神の姿で表されるこの女神は、どちらか一方の宗教には属さない。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱うが、単一の宗教には属さない神格である。
二つの宗教が共有する女神
伝承によれば、ボンビビはアラビアのメディナに生まれ、神の命を受けて兄シャー・ジョンゴリとともにスンダルバンスへ遣わされた。名の「ビビ」はペルシア語やウルドゥー語で「夫人」を意味する。一方で、その像はヒンドゥーの女神の様式で作られ、虎に乗り、あるいは虎を傍らに従えた姿で表される。二つの宗教の要素が分かちがたく混じり合った、宗教の境界地帯ならではの信仰である。
虎の主との争い
スンダルバンスの森には、虎の姿をとる霊ダクシン・ラーイがいた。森を支配し、人を食う存在である。
貧しい少年ドゥケーが、蜂蜜を採る一行に加えられた。一行の長ドナは、蜜を得るかわりに、ドゥケーをダクシン・ラーイに差し出す約束をしていた。島に置き去りにされたドゥケーがボンビビに祈ると、女神が現れてダクシン・ラーイを退けた。ボンビビは森を分け、人が入ってよい領域と、ダクシン・ラーイの領域とを定めた。そして、人は必要な分だけを取り、それ以上を求めてはならないと命じた。過剰な採取を戒めることが、この信仰の核心にある。
虎とともに生きる
スンダルバンスはベンガルトラの生息地であり、蜂蜜を採る人々や漁民が、今も虎に襲われて命を落としている。森に入る前にボンビビに祈る儀礼は、危険な生業に就く人々の、実際的な備えでもある。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ボンビビの像である。
関わる伝承
ダクシン・ラーイと対をなし、兄シャー・ジョンゴリとともに語られる。
文化的足跡
ボンビビの物語は『ボンビビ・ジョハルナマ』という詩の形で伝わり、ボンビビ・パーラーという劇として上演されている。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。