ピエタース
ピエタス · Pietas
ローマの主要な徳「敬虔・孝行・忠誠」の擬人神。アエネーアースが老父を背負って逃げる姿がその図像的定型。前181年に神殿が建てられ、皇帝の徳として貨幣に描かれた。「ピエタ」の語源。
解説
概要
ピエタース(Pietas)は、「義務」「宗教性」「忠誠」「献身」「孝行」などさまざまに訳され(英語の piety はこのラテン語に由来する)、古代ローマ人の主要な徳の一つであった。建国の英雄アエネーアースの特徴的な徳であり、ウェルギリウス『アエネーイス』を通じてしばしばピウス(「敬虔な、献身的な」)の添え名が与えられる。
ピエタースの聖なる性格は、神格化された擬人像ピエタース——ローマの貨幣にしばしば描かれる女神——によって体現された。ギリシアの対応者はエウセベイアである。
概念
キケローはピエタースを「神々、祖国、両親、血縁者への義務を果たすよう促す徳」と定義した。神々への敬虔、国家への忠誠、親への孝行が、一つの語で表される。
アエネーアースが燃えるトロイアから老父アンキーセースを背負って逃げる場面が、ピエタースの図像的な定型である。神々(ペナーテース)と父と子を一度に救うこの姿が、ローマ的な徳の理想を示した。
神殿
前181年、マニウス・アキリウス・グラブリオが父の誓願を果たしてフォルム・ホリトリウムにピエタースの神殿を建てた。伝えによれば、この場所には投獄され餓死を命じられた父を、娘が自らの乳で養ったという逸話があり、「ローマの慈愛」(カリタース・ローマーナ)として知られる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、アントニヌス・ピウスの貨幣である(138年)。ピエタースを描く。
貨幣においてピエタースは、祭壇の傍らに立って香を捧げる女、あるいは子供を伴う女として表される。前者は神々への敬虔、後者は家族への献身を示す。
皇帝アントニヌスの添え名「ピウス」は、養父ハドリアヌスの神格化を元老院に認めさせた孝行によるとされる。皇帝の徳の名として、ピエタースは帝政期の政治的な語彙の中心にあった。
関わる神格・伝承
アエネーアースの徳。フィデース、ホノース、ウィルトゥースと並ぶ徳の擬人神。
文化的足跡
「ピエタ」——死んだキリストを抱く聖母の図像——は、この語に由来する。ミケランジェロの《ピエタ》をはじめ、キリスト教美術の主要な主題の名がローマの徳の名である。