ホノース
ホノス · ホノル · Honos
ローマの名誉の擬人神。勇気の神ウィルトゥースと対で祀られ、将軍の勝利を記念する神殿が建てられた。一つの神殿に二神を祀ることを神官が拒み、隣接する二つの神殿になった。月桂冠とオリーブと豊穣の角を持つ。
解説
概要
ホノース(Honos、ホノルとも)は、ローマで名誉を神格化した存在である。戦場での勇気を神格化したウィルトゥースと組になって祀られ、その神殿は勝利を得た将軍たちの手で建てられた。
神話・物語
固有の物語はなく、その歴史は神殿の歴史である。キケロー『神々の本性について』によれば、前233年、執政官クイントゥス・ファビウス・マクシムスがリグリア人との戦いののち、カペーナ門の外にホノースの神殿を奉献した。
前222年、マルクス・クラウディウス・マルケッルスは、クラスティディウムでガリア人と戦う際に、ホノースとウィルトゥースに神殿を誓った。のちにこの神殿を一つの堂で二神に捧げようとしたとき、神祇官たちが反対した。リーウィウス(27.25)によれば、一つの堂に二柱の神を祀ると、落雷などの前兆が現れたときにどちらの神に償いをすべきか分からなくなるという理由であった。そこでマルケッルスはウィルトゥースのための堂を別に設け、二つの神殿が並び立つことになった。神殿はマルケッルスの死後、前205年に子によって奉献され、彼がシュラクーサイから持ち帰った美術品で飾られた。ウィルトゥースの堂を通らなければホノースの堂に入れない造りであったとも伝えられ、勇気を経て名誉に至るという教訓として語り継がれた。
前2世紀末には、ガイウス・マリウスがキンブリ人とテウトネス人に勝ったのち、その戦利品でホノースとウィルトゥースの神殿を建てている。
図像と象徴
槍や笏を手にし、月桂冠を戴き、豊穣の角を抱く若者、あるいは女性の姿で表される。前70年頃の共和政期の銀貨には、ホノースとウィルトゥースの頭部が並んで刻まれた。本サイトの主画像は、ホノースを刻んだ帝政期のアウレウス金貨である。
関わる神格・伝承
ウィルトゥースと対をなす。フィデース、ピエタースと並ぶ、ローマの徳目の神格の一つである。
文化的足跡
ラテン語の honos(honor)は、英語の honour、フランス語の honneur などの語源となり、西洋語の「名誉」の語彙に受け継がれた。