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ウィルトゥース
PLATE — VIRTUS
ROMA · ローマ神話
VIRTUS

ウィルトゥース

ウィルトゥス · ウィルトゥース · Virtus

Ancientcointraders CC BY-SA 4.0

ローマの武勇の神。市民に求められた徳ウィルトゥースを神格化した存在で、名誉の神ホノースと対で祀られた。貨幣の図像に多く現れる。

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解説

概要

ウィルトゥース(Virtus)は、勇気と武勇を司るローマの神である。ローマ人が徳目としたウィルトゥース——男(ウィル)たるにふさわしい資質——を擬人化した神格で、ギリシアではアレーテー(卓越)が対応するとされた。しばしば名誉の神ホノースと組み合わせて祀られ、ローマのポルタ・カペーナには両神を合祀する神殿があった。

性別は一定しない。貨幣の図像では、女性の姿でも老人の姿でも若者の姿でも表される。抽象名詞の神格にしばしば見られる揺らぎである。

神話・物語

物語は伝わらない。この神を語るのは、神殿の来歴と、貨幣と、そして一つの寓話である。

ポルタ・カペーナの神殿にウィルトゥースの部分が加えられたのは、前205年のシュラークーサイ攻略ののちであった。そのときの造りが示唆に富む。参拝者はまずウィルトゥースの神殿を通り抜けなければ、ホノースの神殿に至れないようになっていたのである。名誉は軍事的な成功なしには得られない、という理屈が建築のかたちで示されている。

寓話のほうは「岐路に立つヘーラクレース」として知られる。若きヘーラクレースが分かれ道で二柱の女神に出会う。一方は安逸と快楽を説くウォルプタース、他方は労苦と武勇を説くウィルトゥース。ヘーラクレースは後者を選ぶ。もとはソフィストのプロディコスに帰される話で、ローマを経てルネサンス以降の絵画で繰り返し描かれた主題となった。

ベローナとの関係も伝わる。ノーワラで見つかった碑文は「ウィルトゥース・ベッローナに」と刻み、3世紀のラクタンティウスは異教徒がウィルトゥースをベローナの名でも呼んだと記す。抽象概念の神格どうしが重なり合う、ローマらしい現象である。

図像と象徴

本項に掲げたのは、ゴルディアーヌス3世の銀貨アントニニアーヌス(238年から239年、ローマ造幣所)である。裏面には VIRTVS AVG(皇帝のウィルトゥース)の銘とともに、軍装で立ち、楯と槍を執って左を向く神像が刻まれている。銘によって同定できるうえ、皇帝がこの徳目を自らの資質として掲げたことまで読み取れる資料である。ウィルトゥースは3世紀の貨幣にきわめて多く現れ、テトリクス帝やポストゥムス帝の貨幣にも刻まれた。軍が皇帝を擁立した時代に、軍事的な徳が繰り返し掲げられたことになる。

墓碑の浮彫では、この神が単独で現れることはない。つねに男性の傍らに置かれ、勇武や男らしさを示す場面で主人公を補佐する役として配される。

系譜と関係

系譜は語られない。ホノースと対をなし、ベローナと重ねられ、ネリオーと同じく武勇という資質を名とする神格の一群に属する。ローマの神々には、フォルトゥーナ(運命)やウィクトーリア(勝利)のように抽象名詞がそのまま神になった例が多く、この神もその列にある。軍神のファセットのなかでは、戦そのものではなく戦士の資質の側を担う。

文化的足跡

ローマ滅亡後も、ウィルトゥースは徳の観念としてキリスト教世界に受け継がれた。マキァヴェッリ『君主論』第25章が、人事の半ばを支配するフォルトゥーナと、それに抗する力ウィルトゥースを対置したのはその延長にある。1776年のアメリカでは、ウィルトゥースがヴァージニア州の州章の中心に据えられ、そのまま州旗の意匠となった。倒れた暴君の上に立つ女性像で、市民的徳という啓蒙期の理念を古代の神格に託したものである。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q582177 — 骨格データの出典
Commons
Virtus (mythology) — 図像カテゴリ