ペーネイオス
ペネイオス · ペーネイオス · Peneus
テッサリアの河神で、テンペ渓谷を流れる川を体現する。娘ダプネーがアポローンに追われて助けを求めたとき、月桂樹に変えて救った。以後月桂樹はアポローンの聖樹となり、その冠が詩人と勝利者に与えられた。
解説
概要
ペーネイオス(Πηνειός / Peneios)は、テッサリアを流れるペーネイオス川の神である。オリュンポス山とオッサ山のあいだのテンペ渓谷を抜けて海に注ぐ川で、神話では娘ダプネーを月桂樹に変えてアポローンから救った父として知られる。
神話・物語
多くの河神と同じく、オーケアノスとテーテュースの子とされ、ヘーシオドス『神統記』の河の一覧にも名が見える。
オウィディウス『変身物語』第1巻によれば、アポローンはエロースの金の矢に射られてダプネーを恋し、娘のほうは恋を退ける鉛の矢を受けていた。逃げる娘に神が追いつこうとしたとき、ダプネーは父の流れに向かって、この姿を変えて救ってほしいと祈った。その言葉が終わらないうちに身体は硬くなり、樹皮に包まれ、髪は葉に、腕は枝になった。アポローンはこの木を自らの聖樹と定め、その葉で冠を編んだ。
ただしダプネーの父については異説があり、アルカディアの河神ラードーンの娘とする伝え(パウサニアースなど)もある。
ヘーロドトスによれば、テッサリアの人々は、かつて湖であったこの地の水をポセイドーンが山を裂いて流し出し、テンペ渓谷ができたと語っていた(7.129)。
図像と象徴
本サイトの主画像は、ニコラ・プッサンの《アポローンとダプネー》(1664年頃、ルーヴル美術館蔵)で、画家の絶筆とされる大作である。変身の場面の傍らに、河神ペーネイオスが壺にもたれて座る姿が描き込まれている。
近世の絵画では、ダプネーの変身を描く画面の片隅に、水瓶を抱えた老人の姿で河神が添えられることが多い。
系譜と関係
父はオーケアノス、母はテーテュース。ナーイアスのクレウーサとのあいだに、ラピテース族の王ヒュプセウスと、ダプネー、スティルベーらをもうけた。ヒュプセウスの娘キューレーネーは孫にあたる。
文化的足跡
テンペ渓谷は古代から景勝の地として名高く、アポローンの聖地とされた。デルポイのピューティア競技の勝者に与える月桂冠は、この谷の月桂樹から採られたと伝えられる。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。