オバタラ
オバタラー · オリシャンラ · オリシャンラー
ヨルバ宗教で最も年長とされるオリシャ。名は「白衣の王」を意味する。粘土から人のかたちを造ったと伝えられ、純白を標として今日もイレ・イフェで祀られる。
解説
概要
オバタラ(ヨルバ語 Ọbàtálá)は、西アフリカのヨルバ人が奉じる神で、オリシャのうち最も年長とされる一柱である。名はオバ(王)とアラ(染めていない白布)から成り、「白衣の王」を意味する。オリシャンラ(大いなるオリシャ)とも呼ばれ、至高神オロドゥマレから大地と人の造形を託された創造神・主神である。粘土から人のかたちを造る職人であって、そこに息を吹き込むのはオロドゥマレの領分とされる。創造の仕事がこう二つに分かたれている点が、この神の性格を決めている。
神話・物語
大地の創造については伝えが割れる。オロドゥマレはまずオバタラに、原初の海の上へ陸を造る役を与えた。ところが彼が椰子酒に酔って眠るあいだに、オドゥドゥワがその袋を取り、先に大地を築いてしまう。目覚めたオバタラには、人を造る役が残された——この筋書きが広く知られる。ただしヨルバの各地の伝承は、それぞれ自らの神を創造者として語ってもおり、一本の正統として扱うことはできない。
人の造形をめぐっては、こう語られる。オバタラは粘土をこねながら椰子酒を飲み、酔いのために整わぬかたちをいくつも作ってしまった。醒めて悔いた彼は二度と酒を口にせぬと誓い、以後、障害をもって生まれた者たちを「エニ・オリシャ(オリシャの人)」と呼んで自らの庇護下に置いたという。椰子酒がこの神の禁忌とされるのは、この一話に由来する。
イレ・イフェの伝承では、オバタラは人としてこの都を治めた王でもある。オドゥドゥワに王位を奪われたのち奪還したと語られ、その顛末はイフェの祭と、オオニ(イフェ王)の即位儀礼のうちに今も再演される。
図像と象徴
すべてが白い神である。祭司も巫女も白衣のみをまとい、白い数珠セセ・エフンを掛ける。白亜エフン——蝸牛の殻を挽いた白い粉——は清浄の徴として身体や祭壇に印される。供物も白で揃えられ、蝸牛、白い鶏、搗いた山芋、蝸牛を煮た水が捧げられる。持物は杖オパ・オソロ、聖鳥は白鳩である。青と赤で彩られる他のオリシャに対し、オバタラの図像は色を引き算することで成り立っている。その白は染める前の布の色、すなわち何も書き込まれていない状態を指す。本項の図版はイレ・イフェのオバタラ神殿に集う祭司たちで、白衣というこの神の最も重要な標がそのまま写っている。
系譜と関係
妻はイフェではイェモオとされ、新大陸の伝えではイエマンジャを配偶とすることもある。創造をめぐる争いの相手オドゥドゥワは、伝えによって兄弟とも敵手とも語られ、両者の関係はイフェの王統をめぐる歴史の記憶と重なる。オルンミラは彼の側に立った盟友であり、椰子酒による失敗を誘ったのはエシュであったとする伝えもある。
文化的足跡
イレ・イフェではオバタラを称える祭が今日も営まれ、白衣の信者が都を行く。新大陸では習合が進み、キューバのサンテリアでは慈悲の聖母(メルセデスの聖母)と、ブラジルのカンドンブレではオシャラー(Oxalá)としてボンフィンの主イエスと重ねられた。サルヴァドールで1月に行われるボンフィン教会の祭では、白衣の女たちが香水を混ぜた水で聖堂前の階段を洗う。カンドンブレの信者が白をまとう習慣そのものが、この神の祭祀に由来するといわれ、アフリカ神話系のディアスポラ宗教を外から見たときの視覚的な記号にもなっている。