ミルコム
ミルコーム · Milcom · Milkom
アンモン人の国家神で、名はセム語根「王」に由来する。旧約聖書ではソロモンがその祭壇を建てたと記される。ヨルダン東岸のアンモン・モアブ・エドムはそれぞれミルコム・ケモシュ・コースを国家神とした。モレクとの区別は明確でない。
解説
概要
ミルコム(アンモン語 mlkm)は、今日のヨルダンの首都アンマン(古代のラバト・アンモン)を中心に栄えたアンモン王国の国家神である。名は「王」を意味するセム語の語根 m-l-k に由来する。ヨルダン川の東岸には、アンモン、モアブ、エドムの三つの王国が並び、それぞれミルコム、ケモシュ、コースを国の神としていた。
神話・物語
ミルコムについての物語は伝わらない。アンモン側の資料としては、アンマンの城塞で見つかった前9〜8世紀の碑文があり、ミルコムの下した、建築にかかわるとみられる託宣が記されている(名の最初の字は復元による)。テル・エル・マザルの陶片や、ミルコムの名を含む五つほどの人名にも現れる。ただしアンモン人の名に最も多く含まれる神名は、ミルコムよりもエールである。
ヘブライ語聖書では、ソロモン王が晩年、外国人の妻たちのために異国の神々の祭壇を建て、そのなかに「アンモン人の憎むべきもの」ミルコムがあったと記す(『列王記上』11章5節)。のちにヨシヤ王がこれを汚して廃した(『列王記下』23章13節)。
図像と象徴
アンマン周辺からは、男性の立像や頭部の像がいくつも見つかっている。その一部はエジプトのオシリスの冠であるアテフ冠をかぶり、ミルコムを表すとも、神とされた王を表すともいわれ、決め手はない。本サイトが掲げるのは、そうした神格化されたアンモン王の像(ヨルダン博物館蔵)である。由来のわからないアンモンの印章のうち三点には、ミルコムの名とともに牡牛の図像や星が刻まれている。
系譜と関係
親や配偶神は伝わらない。同じ「王」の語根をもつ名として、テュロスのメルカルト(「都市の王」)や、ヘブライ語聖書のモレクがある。聖書のなかでミルコムとモレクの区別はいつも明確ではなく、写本によって読みが分かれる箇所もある(『列王記上』11章7節など)。
文化的足跡
アンマンの名は、アンモンの都ラバト・アンモンにさかのぼる。ヘブライ語の母音記号を付ける以前の本文では、「彼らの王」(マルカム)と「ミルコム」が同じ子音で書かれるため、『エレミヤ書』49章などでどちらと読むかが議論されてきた。