ラレース
ラール · ラレス · 家の神
ローマの家と辻の守護神で、家の祭壇ララリウムに祀られた。角杯と皿を持って踊る若者の姿で表される。起源はローマ人自身も説明できず、祖霊・炉・境界の神の混合とみられる。アウグストゥスが辻の祭祀を皇帝崇拝の基層とした。
解説
概要
ラレース(Lares、古形ラセース、単数形ラル)は、古代ローマの宗教における守護神である。その起源は不確かで、英雄的な祖先、炉、野、境界、豊穣の守護者、あるいはこれらの混合であったかもしれない。
ラレースはその場所あるいは職能の境界内で起こるすべてを見守り、守り、影響を与えると信じられた。家のラレースの像は家族の食事の際に食卓に置かれ、その存在、祭祀、祝福は家族のあらゆる重要な場面で必要とされたようである。
家のラレース
各家庭にはララリウム——家の祭壇——があり、そこにラレースの像がペナーテース、家長のゲニウスとともに祀られた。ポンペイの家々には、ララリウムの壁画が多数残る。二人の若者が踊りながら角杯と皿を持つ姿が定型であり、中央にゲニウス、下に蛇が描かれる。
家族は日々ラレースに供物を捧げ、婚礼、誕生、成人、出立、帰還のたびに祈った。花嫁は新居に入るとき、ラレースに銅貨を捧げた。
公共のラレース
ラレースには公共の対応者もあった。ラレース・コンピターレースは辻の守護神で、辻ごとに祠があり、1月のコンピターリア祭で祀られた。アウグストゥスはこの祭祀を再編し、辻のラレースに自らのゲニウスを加えて、皇帝崇拝の基層とした。
ラレース・プラエスティテースはローマ市の守護神で、5月1日に祀られた。オウィディウスは、犬を伴う二人の若者の像と記す。
神話・物語
オウィディウス『祭暦』は、ラレースをメルクリウスとニュンペーララの双子の子とする。ユーピテルの密事を漏らして舌を抜かれたララを、メルクリウスが冥界へ連れて行く途上で犯し、生まれたのが辻のラレースであるという。この物語はオウィディウス以外に伝わらない。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ローマの青銅製ラル像である(1世紀、マドリード国立考古学博物館蔵)。
短い衣をまとい、片足を上げて踊る若者の姿が定型である。角杯から皿へ酒を注ぐ。この軽やかな姿は、家庭の日常的な守護神としての親しみやすさを示す。
起源が不確かであるという点が、この神格を規定する。死者の霊とする説、炉の神とする説、境界の神とする説——ローマ人自身が説明できなかった古い神が、日常の祭祀のなかで生き続けた。
関わる神格・伝承
ペナーテース、ゲニウス、ウェスタとともに家の神々をなす。母はララ(オウィディウス)。
文化的足跡
「ラレースとペナーテース」は、英語で「家庭」「家財」を指す慣用句になった。