コタラト
Kotharat · Kathirat
受胎・妊娠・出産・婚姻にかかわるウガリットの七柱の女神たち。名は「巧みである」を意味する語根に由来し、工匠神コシャル・ハシスと語根を共有する。『アクハト物語』でダニールの家に七日留まり、『ヤリフとニッカルの婚姻』では「燕の娘たち」と呼ばれる。
解説
概要
コタラト(ウガリット語 kṯrt)は、受胎、妊娠、出産、婚姻にかかわる七柱の女神たちの一群で、青銅器時代に今日のシリア北部を中心に崇められた。カナンの都市ウガリットのほか、マリやエマルの文書にも現れる。名は「巧みである」「成し遂げる」を意味するセム語の語根 kšr に由来するとみられ、工匠の神コシャル・ハシスの名と同じ語根を持つ。
名
コタラトは、ウガリット語 kṯrt に慣用の母音を補った読みで、カティラトゥなどとも書かれる。マリの文書には古い形カワシュラートゥムと新しい形クーシャラートゥムが、エマルでは「イルー・カシャラーティ」の名が見える。ウガリットの文書から複数形であることがわかり、七柱の一群と考えるのが通例だが、四柱あるいは六柱とする見方もある。
神話・物語
コタラトはウガリットの二つの詩に現れる。『アクハト物語』では、子のない義しい王ダニールが神々に祈ると、コタラトが七日のあいだダニールの家に留まり、饗応を受ける。女神たちが去ったのち、ダニールの妻は身ごもり、英雄アクハトが生まれる。
月の神ヤリフの婚礼を歌う『ヤリフとニッカルの婚姻』では、詩の終わりにコタラトへの祈りが置かれ、女神たちは「輝く娘たち、燕の娘たち」と呼ばれる。
図像と象徴
コタラトを表した像は知られておらず、本サイトも主画像を掲げない。「燕の娘たち」という呼び名から、燕がこの女神たちのしるしとされたと考えられている。
系譜と関係
父を新月の神ヒラル(hll)とする箇所がある。一柱ずつの名は『ヤリフとニッカルの婚姻』に挙げられているとする研究者もあるが、それらの語が固有の名であるかどうかは意見が分かれる。メソポタミアで母なる女神ニンマフに仕える女神たちの総称シャッスーラートゥ、フルリのフテナとフテッルラに相当するとされ、後者は少なくとも一部がコタラトを手本にしたとも考えられている。