テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
PLATE — 𐎊𐎗𐎃
PHOENICIAN · フェニキア・カナン神話
𐎊𐎗𐎃

ヤリフ

ヤラフム · Yarikh · Yaraḫum

ウガリットの月の神で、名は「月」を意味する。詩『ヤリフとニッカルの婚姻』は月神ハルハビの娘への求婚と花嫁料の交渉を語り、実際の婚礼で朗唱されたとみられる。神々の婚姻を語りながら人の婚姻を祝福する台本である。

01

解説

概要

ヤリフ(ウガリット語 𐎊𐎗𐎃 yrḫ)は、ウガリットで主要な神の一柱として祀られた月の神である。名は天体の月と「(暦の)月」を指す普通の言葉と同じで、ヘブライ語の「ヤーレアハ」(月)とも同じ語根である。アモリ人の人名にはヤラフ、エラフの形で現れ、マリなどアモリ人の住む各地から、東はエシュヌンナまで知られていた。

祭祀の中心はエブラの近くにあったラルガドゥとみられ、神話のなかではアビルマが聖地とされる。

神話・物語

ウガリットの詩『ヤリフとニッカルの婚姻』(KTU 1.24)は、ヤリフが月の神ハルハビの娘ニッカルに求婚する物語である。ヤリフは銀と金と宝石を花嫁の代価として払うと申し出る。ハルハビはほかの花婿の候補を挙げて渋るが、ヤリフは求めを繰り返し、ついに婚姻が成って、花嫁の代価が量られる。詩の終わりには、出産と婚姻の女神たちコタラトへの祈りが置かれている。神々の婚礼を語りながら人の婚礼を祝福する内容で、実際の婚礼の場で唱えられたと考えられている。

ほかに、エールの酒宴を語る断片(KTU 1.114)では、ヤリフが犬のように卓の下にもぐり込んで食べ物を得る場面がある。

図像と象徴

ヤリフを表した確かな像は知られておらず、本サイトも主画像を掲げない。前7世紀のアンモンの印章には三日月を刻んだものがあるが、同じ時期に西方へ広がったハッランの月神シンの祭祀にかかわるものかもしれない。

ウガリットの暦は月の満ち欠けにもとづき、新月の日には儀礼が行われた。月食を記録して凶兆として読み解いた文書も見つかっている。

系譜と関係

妻はニッカル、義父はハルハビである。ヤリフのほかにもウガリットには月にかかわる神の名がいくつか見え、コタラトの父とされるヒラル(hll)を新月の神とみる説もある。

文化的足跡

アンモンの王の像の台座には、「ヤリフはわが助け」を意味する王名(前700年頃)が刻まれている。『ヤリフとニッカルの婚姻』は、古代の近東の婚礼の手順を知る資料としても重んじられている。

02

領分・別名

親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。

𐎊𐎗𐎃
ヤリフ
フェニキア・カナン神話
𐎐𐎋𐎍
ニッカル
『ヤリフとニッカルの婚姻』(KTU 1.24)
収載データなし
★
𐎊𐎗𐎃
ヤリフ
フェニキア・カナン神話
収載データなし
フル系図ページを開く →
04

資料

Wikidata
Q1519326 — 骨格データの出典