ニントゥ
ママ · ニントゥ · ベーレト・イリー
『アトラ・ハシース』で粘土と殺された神の血から人類を創った母神。原初の粘土を十四に分け、七対の胎児を生んだ。ニンフルサグ・ニンマフ・アルルと同一とされる。煉瓦を象徴とする出産の女神。
解説
概要
ママ(Mami)は、ベーレト・イリー、あるいはニントゥ(Nintu)としても知られ、バビロニアの叙事詩『アトラ・ハシース』その他の創造伝説におけるメソポタミアの女神である。おそらくニンフルサグと同一であった。
粘土と血からの人類の創造に関わった。
神話・物語
伝説によれば、ニントゥは原初の粘土から十四の塊をつまみ取り、それを子宮の神々の姿に形づくった。左に七つ、右に七つを置き、そのあいだに煉瓦を置くと、これらから最初の七組の人間の胎児が生まれたという。
叙事詩『アトラ・ハシース』によれば、身分の低い神々が労働に耐えかねて反乱を起こしたとき、エンキの提案によって、神々は自分たちのなかの一柱ウェー・イラを殺し、その血と肉を粘土に混ぜて人間を造ることにした。ニントゥはこの粘土をこね、お産の女神として人間を生んだ。このとき、「神々の女主」を意味するベーレト・イリーの名を得たとされる。
「ニントゥ」は、「産む女主」を意味する。お産のときに呼ばれる女神であり、その像は産室に置かれた。お産のとき、産婦はその上にしゃがむ煉瓦を用いたが、この産褥の煉瓦が、ニントゥのしるしとなっている。
名
ニントゥ、ママ、ベーレト・イリー、ニンフルサグ、ニンマフ、アルル——これらはいずれも同じ母神を指す名とみられる。地域と時代によって名が異なり、次第に統合された。
「ママ」の名は、幼児語の「母」に由来する可能性が指摘されている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ハファージャのニントゥ神殿第七層出土の女性礼拝者像である(初期王朝期、前2600〜2500年、シカゴ大学東洋研究所博物館蔵)。
粘土から人を作るという主題が、この女神を規定する。陶工が粘土から器を作るように、母神が粘土から人を作る。メソポタミアの人間創造神話に共通する観念である。
血が混ぜられるという点も重要である。粘土だけでは人は動かない。殺された神の血が、人に生命と——同時に反逆の性質を——与える。
関わる神格・伝承
ニンフルサグ、ニンマフ、アルルと同一。エンキと協力して人を創った。
『エンキとニンマフ』では、エンキとニンマフが酒宴で人を作る競争をし、ニンマフが作った不具の者にエンキが役割を与えるという話が語られる。
文化的足跡
「粘土と神の血から人を作る」という主題は、旧約聖書の創世記における土からの人の創造と比較されてきた。ただし血の要素は聖書にはない。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。