カッリヤンカットゥ・ニーリ
カッリヤンカットゥ・ニーリ · ニーリ · Kalliyankattu Neeli
ケーララの民謡と民話に現れる悪意ある霊ヤクシ。欺かれて殺された寺院の踊り子が霊となり、夜の森で美しい女の姿で男に近づき血を吸う。恐れられた霊でありながらパンチャヴァンカードゥの寺院で母神として祀られ、祟りを守護に転じている。
解説
概要
カッリヤンカットゥ・ニーリは、南インド、ケーララ州の民謡や、旧トラヴァンコール王国の地の民話に語られる女の霊(ヤクシ)である。欺かれて殺された女性が霊となり、夜の森で美しい女の姿で男に近づいて、その血を吸うと恐れられた。恐ろしい霊でありながら、パンチャヴァンカードゥの寺院では母なる女神として祀られている。
なお本サイトの分類では、ヒンドゥーの体系に含めて扱う。
殺された女
最もよく語られる筋によれば、ニーリはもと寺院に仕える踊り手(デーヴァダーシー)であったが、恋人に欺かれて殺された。死後、ニーリは悪しき霊ヤクシとなり、自分を殺した男の生まれ変わりを追って復讐を果たしたという。夜の森を行く男の前に美しい女の姿で現れ、近づいてきた男の血を吸って殺すとされた。ニーリは、C・V・ラーマン・ピッライの歴史小説『マールターンダヴァルマ』にも登場する。
恐れられた霊が母神に
恐れられた霊が、寺院では母なる女神として祀られている。恐ろしい霊を祀ることで、その力を人を守る力へと転じるのである。非業の死を遂げた者の霊を祀って鎮める点で、日本の天神(菅原道真)の信仰と同じ構造を持つ。ケーララでは、非業の死を遂げた者が神になる例が多い。
ヤクシニーからヤクシへ
古い時代のヤクシニーは、豊かさと樹木にかかわる女神であった。それがケーララでは、男を誘惑して殺す女の霊ヤクシへと意味を変えた。死んだ女性が男を殺す霊になるという型には、女性をめぐる恐れが映し出されているという指摘もある。
映画のなかのニーリ
1960年代以降、ニーリを題材にしたマラヤーラム語の映画が繰り返し作られてきた。『バールガヴィー・ニラヤム』(1964年)は、ケーララのホラー映画の先駆けとされる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる伝承
ヤクシニーの系譜に連なり、タミルのイサッキと同じ物語を持つ。
非業の死を遂げた女性が女神となった例として、ラージャスターンのラーニー・バティヤーニーも挙げられる。
恐ろしい霊が村の守護女神となった例として、タミルのカーテーリ・アンマンも挙げられる。
文化的足跡
ニーリは、ケーララの民俗とホラー映画で最もよく知られた存在である。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。