ジン
ジン · ジンニー · ジーニー
火から造られた自由意志を持つ超自然の存在で、天使・人と並ぶ三つの理性ある被造物の一つ。信仰者にも不信仰者にもなり、審かれる。イスラーム以前の土地の霊と詩人の霊感の観念に遡り、他宗教の霊もジンとして体系に組み込まれた。
解説
概要
ジン(ジンニー、英語化してジーニー)は、古代アラビアの宗教とイスラームにおける超自然の存在である。
人と同じく、その行いに責任を負い、神の導きを受け入れるか否かによって、信仰者(ムウミヌーン)にも不信仰者(カーフィル)にもなりうる。
ジンは本来的に悪でも善でもないため、イスラームは他の宗教の霊を——
なお本サイトの分類では、アブラハムの体系に含めて扱う。
三つの被造物
イスラームにおいて、理性を持つ被造物は三種である。
天使(マラーイカ)。 光から造られる。神に背かない。
ジン。 火(あるいは煙のない炎)から造られる。自由意志を持つ。
人。 土から造られる。自由意志を持つ。
ジンは人と同格。 責任を負い、審かれ、天国にも地獄にも行く。
クルアーン第72章。 「ジン」章は、ジンの一団がクルアーンを聞いて信仰に入る場面を語る。
イスラームを信じるジンがいる。 悪魔とは異なる。
イスラーム以前
ジンの観念は、イスラーム以前のアラビアに遡る。
土地の霊。 荒野、廃墟、墓地、樹に宿る。
詩人の霊感。 詩人にはそれぞれジンがついて言葉を与えるとされた。
「マジュヌーン」(ジンに憑かれた者)は、狂気を意味する語である。同時に、詩的な霊感をも意味した。
クルアーンによる再編。 イスラームは、これらの霊を否定せず、神の被造物として体系に組み込んだ。
他宗教の霊も。 「ジンは本来的に悪でも善でもない」ため、イスラームは他の宗教の神々や霊を、ジンとして位置づけることができた。
排除でなく再配置。 ユダヤ教が異教の神をシェディームとしたのと同じ構造である。
種類
イフリート。 強力で狡猾な種。
マーリド。 反逆的な種。
シャイターン。 誘惑する種。イブリースがその長である。
グール。 墓場に住み屍肉を食う種。
シッラー、ハーティフなどの名も伝わる。
ソロモンとジン
クルアーンにおいて、ソロモン(スライマーン)はジンを使役する。
神殿と宮殿。 ジンが建物を建て、潜水して真珠を採る。
風。 風をも従える。
ジンが働く。 ユダヤ教のソロモン伝承と共通する。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、『シャー・ナーメ』の写本挿画である(ウェルカム・コレクション)。
関わる伝承
イブリース、イフリート、マーリド、グールを含む。シェディームと同型。
文化的足跡
『千夜一夜物語』の「ランプの精」を通じて、ジンは西洋で「ジーニー」として知られるようになった。
願いを叶える存在という理解は、原典のジンの観念とは大きく異なる。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。