イフリート
イフリート · エフリート · アフリート
イスラーム文化における強力な種類の悪魔。クルアーンでは「ジンのなかのイフリート」として一度だけ現れる形容だったが、後代に独立した種族となった。非業の死を遂げた者の血から生じる死者の霊ともされ、エジプトでは今日も日常語である。
解説
概要
イフリート(エフリート、アフリート、アフリートとも綴る。複数形アファーリート)は、イスラーム文化における強力な種類の悪魔である。
アファーリートはしばしば冥界と結びつけられ、死者の霊と同定され、ヨーロッパ文化における悪しき土地の霊(ゲニウス・ロキ)と比較されてきた。
クルアーン、ハディース、そしてミウラージュ(昇天)の物語において、この語は添え名として——
なお本サイトの分類では、アブラハムの体系に含めて扱う。
クルアーンの一節
クルアーン27章39節に、この語が一度だけ現れる。
ソロモンとシバの女王。 ソロモンが、シバの女王の玉座を運ばせようとした。
「ジンのなかのイフリートが言った。『あなたが席から立つ前に、私がそれをあなたにもたらしましょう』」
添え名として。 ここでは「ジンのなかのイフリート」であり、種族の名というより「強力な」を意味する形容である。
種族化。 後代の伝承において、これが独立した種族の名となった。
死者の霊
イフリートは、しばしば死者の霊とされる。
殺された者。 とりわけ非業の死を遂げた者の血から生じるとされる。
血の場所。 殺人の現場に留まり、復讐を求める。
エジプトの民間信仰。 今日のエジプトにおいて、「アフリート」は死者の霊を指す語として日常的に用いられる。
釘を打つ。 出現を防ぐため、血の落ちた場所に新しい釘を打つという習俗が伝わる。
千夜一夜物語
『千夜一夜物語』において、イフリートは頻繁に現れる。
巨大。 煙となって壺から出る巨人の姿。
願いを叶える、あるいは殺す。 助けた者を殺そうとする話が繰り返される。
漁師と壺。 千八百年閉じ込められたイフリートが、初めの百年は救う者を富ませようと、次の百年は宝を与えようと考えたが、ついに「救う者を殺そう」と決めたという話は名高い。
待たされた恨み。 恩に報いる意志が、時とともに逆転する。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、『ハムザ・ナーマ』の挿画である。ディーヴのアルガンがハムザに鎧の箱を運ぶ場面(ブルックリン美術館蔵)。
ペルシアのディーヴ。 イスラーム美術において、イフリートはペルシアのディーヴの図像で描かれることが多い。斑の肌、角、牙を持つ。
関わる伝承
ジンの一種。マーリドと並ぶ。
文化的足跡
「イフリート」は、日本のゲームと創作において火の精霊の名として広く用いられている。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。