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イブリース
PLATE — إِبْلِيسْ
ABRAHAMICA · 一神教の伝承
إِبْلِيسْ

イブリース

イブリース · シャイターン · Iblis

アダムと天使たちを見るイブリース(イスタンブル、トプカプ宮殿図書館 MS Bağdat 282 fol.16) PUBLIC DOMAIN

イスラームにおける悪魔たちの長。土から造られたアダムへの跪拝を、自らは火から造られたゆえに優れていると言って拒み、天から追われた。天使ではなくジンとする理解が優勢である。スーフィーには神以外に跪かなかった真の一神教徒とする読みもある。

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解説

概要

イブリース(シャイターンとも)は、イスラームで悪魔たち(シャヤーティーン)の長とされる存在である。クルアーンによれば、神がアダムにひれ伏すよう命じたとき、「わたしは火から、彼は土から造られた」と言ってこれを拒み、天から追われた。天使だったのかジンだったのかは、イスラームの神学で長く論じられてきたが、今日ではジンであったとする理解が優勢である。一部のスーフィーは、イブリースを神以外にひれ伏すことを拒んだ者として、逆説的に読み直した。

なお本サイトの分類では、アブラハムの体系に含めて扱う。

ひれ伏すことを拒む

クルアーンは、この場面をいくつもの章で繰り返し語る。神は土からアダムを造り、天使たちにアダムの前にひれ伏すよう命じた。イブリースを除いて、すべての者が従った。イブリースは「わたしは彼より優れています。あなたはわたしを火から造り、彼を土から造られました」(7章12節)と言った。クルアーンは、イブリースが思い上がって不信仰の者となったと記す。イブリースは「復活の日まで猶予をお与えください」と願い、それを認められて、以後は人を惑わすことを許された。人を誘惑する者の働きが、神の許しのもとにあるという点で、『ヨブ記』の告発者ハ・サーターンと同じ構造を持っている。

上下にペルシア語の文字列がある細密画。中央に横たわる裸のアダムを、色とりどりの翼の天使たちが囲んでひれ伏し、右上の岩陰に黒い顔の人物が立つ
アダムにひれ伏す天使たちと、右上でひとり拒む黒い顔のイブリース(ガーズルガーヒー『恋する者たちの集い』写本挿絵、シーラーズ、1575年頃、フランス国立図書館)作者不明 / パブリックドメイン — Wikimedia Commons

天使かジンか

イブリースが何者であったのかは、イスラームの神学で長く論じられてきた。天使たちに向けた命令に含まれていたのだから天使であったとする説がある一方、クルアーン18章50節は「彼はジンの一人であり、主の命に背いた」と記している。ジンは火から造られるとされ、イブリース自身も火から造られたと語っている。今日では、イブリースはジンであったとする理解が優勢である。キリスト教のサタンが堕ちた天使とされるのに対し、イブリースは天使ではない。その背景には、天使は神に背かないというイスラームの考え方がある。

スーフィーの読み直し

一部のスーフィー(神秘主義者)は、イブリースを違った形で読んだ。10世紀の神秘家ハッラージュは、イブリースを「真の一神教徒」と呼んだ。アダムにひれ伏すことは、神以外のものを拝むことになる。イブリースはそれを拒んだのだ、というのである。神の命に背いてまで神のみを愛したという、この逆説的な読みは、正統派から激しく批判された。ハッラージュは922年に処刑されている。ペルシアの詩人アッタールもまた、イブリースを愛ゆえに呪われた者として描いた。

図像と象徴

本サイトが掲げるのは、アダムと天使たちを見つめるイブリースを描いた写本の挿絵(イスタンブル、トプカプ宮殿図書館蔵)である。ほかの天使が白く描かれるなかで、イブリースだけが黒く、あるいは灰色に描かれることが多い。

関わる神格・伝承

シャヤーティーンの長で、サタンに対応し、ジンの一人とされる。

審判の日の前に現れてメシアを装う敵対者は、ダッジャールと呼ばれる。

文化的足跡

イブリースをめぐるスーフィーの解釈は、20世紀のイスラーム思想のなかで繰り返し論じられてきた。

なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。

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領分・別名

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資料

Wikidata
Q273101 — 骨格データの出典