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ヘルマヌビス
PLATE — ἙΡΜΑΝΟΥ͂ΒΙΣ
AEGYPTVS · エジプト神話
ἙΡΜΑΝΟΥ͂ΒΙΣ

ヘルマヌビス

ヘルマノウビス · ハーマヌビス · Hermanubis

ヘルマヌビス像(ローマ期、大理石、高さ1.55m、ヴァチカン・グレゴリウス・エジプト美術館蔵)/撮影: Colin, CC BY-SA 3.0 CC BY-SA 3.0

ギリシアのヘルメースとエジプトのアヌビスが結びついた習合神。死者の魂を冥界へ導く。ジャッカルの頭にギリシア風の衣とケーリューケイオンを備えた姿で表される。

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解説

概要

ヘルマヌビス(Ἑρμανοῦβις)は、ギリシアのヘルメースエジプトアヌビスが結びついて生じた神格である。死者の魂を冥界へ導く役を担う。

二柱がともに魂の導き手であったことが、この習合の直接の理由である。ローマ支配下のエジプトで広く受け入れられた。

神話・物語

固有の神話は伝わらない。この神は物語ではなく、名と像として存在する。

神名 Ἑρμανοῦβις が知られるのは、いくつかの碑文と文献によってである。その大半はローマ期に属する。プルタルコスは、冥界に関わる相のアヌビスを指す呼称としてこの名を挙げる。ポルピュリオスはこの神を「複合の(σύνθετος)」「半ばギリシア人の(μιξέλλην)」と評した。外から見て、二つのものが継ぎ合わされていることが明らかだったのである。

二柱の神名を並べて一つの神を作るという命名法は、ギリシアの伝統的な宗教では一般的ではない。形の上で近い先例としてヘルマプロディートスがあるが、こちらはヘルメースとアプロディーテーという相反する二神の逆説的な結合を意味しており、ヘルマヌビスのような同化とは性質が違う。似た者どうしを重ねるか、異なる者どうしを衝突させるかの差である。

図像と象徴

本サイトが掲げるのは、ローマ期に彫られた大理石像である(高さ1.55メートル、ヴァチカン・グレゴリウス・エジプト美術館蔵)。犬(ジャッカル)の頭を持つ人体で、ギリシア風の衣をまとい、ヘルメースの持物であるケーリューケイオンを携える。

この組み合わせが、そのままこの神の定義になっている。頭部はエジプト、身体と持物はギリシアである。習合が造形の上でどう解決されたかを、一体の像が示している。像はエジプトの神官団を表象するものとされ、真理の探究に関わるとも解された。

犬の頭を持つ導き手という形象は、後世にも影を落とした。犬頭の聖人として知られる聖クリストフォロスの像は、この神格から着想を得た可能性が指摘されている。旅する者を渡す力ある者という点で、両者の役割は重なる。

関わる神格・伝承

構成要素はヘルメースとアヌビス。同じくローマ期のエジプトで成立した習合神としてはセラピスがあり、こちらはオシリスとアピスを核にギリシア風の姿を与えられた。支配者の側と被支配者の側の神を接続する装置として、この時代のエジプトはいくつもの複合神格を生んでいる。

ただし成立の仕方は異なる。セラピスがプトレマイオス朝の政策的な創出であるのに対し、ヘルマヌビスは職能の一致から自然に生じた呼称に近い。碑文と文献に散発的に現れるだけで、まとまった神殿や祭祀の記録を欠くのはそのためである。

文化的足跡

ヘルマヌビスは、インテルプレタティオ・グラエカ——ギリシア人が異国の神を自分たちの神の名で呼ぶ習慣——がどこまで進みうるかを示す例である。多くの場合、その作業は「エジプトのヘルメース」と呼ぶ程度で止まる。ここでは二つの名が一語に融合し、像の上でも上半分と下半分が別々の文化に属している。

日本語圏では、アヌビスの名は広く知られる一方、この複合形が紹介されることはまずない。しかしローマ期のアレクサンドリアの彫像を見るとき、ジャッカルの頭に杖を持つ像に出会うことは珍しくない。

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領分・別名

INTERPRETATIO — 同一視・同源
アヌビス エジプト神話 同一視
ローマ支配下のエジプトで成立した習合神。プルタルコスはヘルマヌビスの名を、冥界に関わる相のアヌビスを指す呼称として挙げる。神格そのものがアヌビスとヘルメースの同一視の産物である。
ヘルメース ギリシア神話 同一視
両者がともに魂の導き手(プシュコポンポス)であったことが習合の直接の理由である。像はジャッカルの頭にヘルメースの持物ケーリューケイオンを組み合わせる。ポルピュリオスはこの神を「複合の」「半ばギリシア人の」と評した。
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資料

Wikidata
Q2319713 — 骨格データの出典
Commons
Hermanubis — 図像カテゴリ