ガビヤ
ガビヤ · ガビエタ · ガベタ
リトアニアの家の炉の火の霊で、名は「覆う」を意味する。夜に灰をかけて火を覆い「聖なるものとなり横になれ」と唱えた。文献上の言及は1615年の一覧のみだが、火の世話に関わる習俗は近代の民俗調査で確認されている。
解説
概要
ガビヤは、リトアニアの伝承における、家の炉の火に宿る霊である。家と家族を守り、女性たちによって大切に世話された。名は「覆う」「守る」を意味する語に由来し、夜に灰をかけて火を覆い、「ガビヤよ、横になれ」と唱える習わしにその名が表れている。文献にはほとんど記録がないが、火をいたわる習わしは、19世紀から20世紀の民俗調査で確かめられている。
なお本サイトの分類では、バルト神話の体系に含めて扱う。
炉の火の世話
ガビヤは竈の火に宿る。火の世話は家の女性の役目であった。夜になると灰をかけて火を覆い、「ガビヤよ、聖なるものとなって横になれ」と唱えた。朝には灰をかき分けて火を起こす。「覆う」を意味する名は、この夜ごとの所作と重なっている。ガビヤは動物の姿で現れることもあるという。
火を怒らせない
火を踏みつけたり、火に唾を吐いたり、水をかけたりすることは禁じられた。怒った火は「歩き出す」、つまり家を焼くとされたからである。火を消すときには、清い水で慎重に消さなければならなかった。火には塩やパンを供える習わしもあった。
一つの文献と、続いた習わし
文献でガビヤに触れているのは、実質的には一つだけである。16世紀のポーランドのプロテスタントの神学者ヤン・ワシツキが、リトアニアの神々の一覧を書き残し、それが1615年に刊行された。この一覧は異教の習わしを偶像崇拝として退けるために書かれたもので、明らかな誤解や作り事も含まれているとされる。一方、火の世話にかかわる習わしは、19世紀から20世紀の民俗調査で確かめられている。文献の上ではわずかな記録しかなくとも、暮らしのなかの習わしとしては続いていたのである。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。像はなく、竈の火そのものが神である。家の炉の火を守る神という点で、ローマのウェスタ、アステカのチャンティコ、日本の荒神と共通している。
関わる神格・伝承
家と家族を守る神であり、大地の女神ジェミナらとともに家の祭祀をなす。
文化的足跡
「ガビヤ」は、今日もリトアニアで女性の名として用いられている。