チャンデーシャ
チャンデーシュヴァラ · チャンディケーシュヴァラ · ヴィチャーラ・シャルマン
ナーヤナールの一人でシヴァの眷属の長。父の脚を断つほどの信愛によって、寺院財の守護者の位を与えられた聖者。
解説
概要
チャンデーシャ(Caṇḍeśa / चण्डेश)は、ナーヤナール(シヴァへの信愛を歌った六十三人の聖者)の一人であり、シヴァの眷属の長に数えられる。チャンデーシュヴァラ、チャンディケーシュヴァラの名でも呼ばれる。父の脚を斧で断ったという苛烈な説話をもち、その信愛によって寺院財の守護者の位を与えられた。タミルのシヴァ派寺院では、必ず境内の北東にその祠が置かれる。
神話・物語
12世紀のセーッキラール『ペリヤ・プラーナム』が伝える。セイニャルールのバラモンの家に生まれ、ヴィチャーラ・シャルマンと名づけられた。牛を預かる役を負っていた彼は、あるとき砂でリンガを作り、牛の乳をこれに注いで礼拝した。
これを見た村人が父に告げる。乳を無駄にしていると怒った父は、礼拝の最中の子を打ち、リンガを蹴り倒した。信愛の三昧にあった子は、傍らの棒をとって父の脚を打った。棒は斧に変じ、父の脚は断たれたと語られる。
そこへシヴァが妃を伴って現れた。主は彼を眷属の長とし、自らの花環を与え、チャンデーシャの名を授けた。そして脚を断たれた父と母を、自らの父母として遇すると告げたという。子の行為を罰するのではなく、父を主の父として引き受けるという解決の仕方がとられている。
信愛が身内への情や社会の規範に優越するという主張が、この説話の眼目である。タミルのバクティ文献はこの型の説話をいくつも伝えており、なかでもこの一段は最も苛烈な例として知られる。
図像と象徴
坐して手を合わせ、あるいは斧を執る姿で表される。結い髪をもち、傍らに断たれた脚が添えられる作例もある。チョーラ朝の青銅像に優れた例が残る。
象徴となるのは、シヴァから与えられた花環である。主が身につけていたものを受けるという行為は、通常であれば残り物として避けられるが、この文脈では最上の恩寵として語られる。
系譜と関係
シヴァの眷属の長であり、ナンディンやヴィーラバドラ、ブリンギらと並ぶ。ナーヤナールの一人としては、アッパル、サンバンダル、スンダラルら他の聖者と同じ列に置かれる。
文化的足跡
タミル・ナードゥのシヴァ派寺院には、本殿の北東に必ず彼の祠が設けられる。彼は寺院の財を預かる者とされ、参拝者は堂を出る際にその前で手を打ち鳴らす。何も持ち出していないことを示す所作であり、今日も続いている。
寺院への寄進を記録した中世の碑文には、財の帰属先を「チャンデーシュヴァラ」と記す例が数多く見られる。神格が法人格に近い扱いを受けていたことを示す資料として、南インドの社会経済史においてしばしば言及される。信愛の説話が、寺院という制度の運営に直結した例である。