ブロダイウェズ
ブロデュウェズ · ブロダイウェッド · ブロドゥエッド
中世ウェールズ『マビノギ四枝』第四枝で、樫と金雀枝とセイヨウナツユキソウの花から作られた女。夫を裏切り、罰として梟に変えられた。
解説
概要
ブロダイウェズ(Blodeuwedd)は、中世ウェールズのマビノギオン所収『マビノギ四枝』第四枝に登場する女である。ウェールズ語の blodau(花)と gwedd(顔)から成る名で、「花の顔」を意味する。魔術師マースとグウィディオンが、樫と金雀枝とセイヨウナツユキソウの花から作り出し、スェウ・スァウ・ゲフェスの妻とした。
生まれではなく作られた存在であること、そして自らを作った者たちの意図に背いたことが、この人物のすべてである。
神話・物語
スェウは母アリアンロッドから、この世に今ある種族から妻を得られないというトゥンゲズ(禁忌)を課されていた。マースとグウィディオンはこれを、人でも異界の者でもない存在を新たに作ることで越えた。三種の花を集めて呪をかけ、当時の作法で洗礼を授け、ブロダイウェズと名づけたのである。
やがてスェウが叔父マースのもとへ出かけていたあいだに、ペンスィンの領主グロヌ・ペブルが狩の途中で館の前を通りかかった。もてなさぬのは礼を欠くとして招き入れた彼女は、この男と恋に落ちる。二人はスェウの殺害を企て、彼女は夫からその方法を聞き出した。昼にも夜にも、屋内でも屋外でも、馬上でも徒歩でも、着衣でも裸身でも、正しく作られた武器によっても彼は殺されない。ただ黄昏どき、網に包まれ、片足を桶の縁に、片足を山羊の背に置いたところを、一年のあいだ日曜のミサの時間にのみ鍛えた槍で刺せば殺せる、と。
一年後、彼女はその姿勢を夫に実演させ、待ち伏せたグロヌが槍を投げた。スェウは鷲となって飛び去り、グロヌは彼の土地を奪う。快復したスェウが軍を率いて戻ると、ブロダイウェズは侍女たちを連れて逃げた。背後を襲われまいと後ろ向きに歩いた娘たちは山上の湖に落ち、彼女だけが生き残る。追いついたグウィディオンは、殺す代わりに彼女を梟に変えた。他のすべての鳥に憎まれる姿である。おまえは二度と昼の光に顔を見せられない、だが名は失わせない、それは永久にブロダイウェズだ——物語はそう語らせたうえで、「今日の言葉でブロダイウェズは梟を意味する。鳥と梟が敵対し、梟がなお『花の顔』と呼ばれるのはこのためである」と結ぶ。
図像と象徴
古代・中世の図像はない。主画像は、ウェールズの画家クリストファー・ウィリアムズ(1873〜1934)が描いた油彩で、木々の緑のなかから浮かび上がるように立つ裸身の女を捉えている。ニューポート美術館所蔵。彼女が花から立ち上がる瞬間を、輪郭が葉と溶け合ったまま描いた作である。
物語が与える標識は、樫・金雀枝・セイヨウナツユキソウの三種の花と、梟である。三種の選択には理由が語られないが、いずれもウェールズの初夏に白や黄の花をつける木と草であり、作られた瞬間の彼女が季節そのものであったことを示す。梟への変身は罰であると同時に語源譚でもあり、物語は名の意味を花から鳥へと移し替えてみせる。作られた者が名だけを残して姿を奪われるという結末は、この人物の造形と正確に呼応している。
系譜と関係
系譜はない。父も母もなく、作られた。夫はスェウ、情人はグロヌ・ペブル。作り手はマースとグウィディオンである。
第四枝は彼女を弁護も断罪もしない。ただ、彼女が夫を選んでいないこと、そして選ばずに与えられた者が選ぼうとしたことを、淡々と書く。近代以降の読者がこの人物に強く反応してきたのはそのためで、ロバート・グレイヴズは『タリエシンの書』の「木々の戦い」の一部を「ブロダイウェズの歌」とみなし、花の女神の痕跡を読み取ろうとした。ただし原典に女神と呼ぶ記述はなく、これは近代の再構成である。
文化的足跡
四枝の登場人物のうち、20世紀以降に最も多く語り直されたのがこの人物である。アラン・ガーナーの小説『ふくろう模様の皿』(1967年)は、スェウ・ブロダイウェズ・グロヌの三角関係が現代のウェールズの谷で世代ごとに繰り返されるという構成をとり、その連鎖を断つには「自分は梟ではなく花であるべきだった」と気づくほかない、と書いた。サウンダス・ルイスの戯曲をはじめ、ウェールズ語文学でもくり返し取り上げられている。作られた者が作り手に背くという主題は、近代の読者に別の物語を思い起こさせるが、第四枝が書かれた11〜13世紀にその含みはない。