ベリ・マウル
ベリ・マウル · ベリ · Beli Mawr
中期ウェールズ文学の祖先で、アリアンロッドら多くの子の父。グウィネズなど諸王家が系譜を遡らせた。ガリアの太陽神ベレヌスに由来するとされ、異教の神がキリスト教化の過程で王家の祖先に格下げされた例。
解説
概要
ベリ・マウル(Beli Mawr、ウェールズ語で「偉大なベリ」)は、中期ウェールズ文学と系譜における祖先の存在であった。
カッシウェッラウヌス、アリアンロッド、スルーズ・スラウ・エライント、スレヴェリス、アヴァッラハの父である。中世の系譜では、イエスの母マリアのいとこアンナの子あるいは夫として挙げられる。
ウェールズのトリアドによれば、ベリとドーンがアリアンロッドの両親であったが、ベリの他の子の母——およびドーンの他の子の父——は中世ウェールズ文学に言及されない。
系譜における位置
中世ウェールズのいくつかの王家が、その系譜をベリに遡らせた。グウィネズ、ポウィス、デヘイバルスの王統が、この人物を祖とする。
『マビノギ』はペナルズンをベリ・マウルの娘と名づけるが、系譜は混乱している。彼の姉妹を意味したのかもしれない。
神格としての起源
ベリの名は、ガリアの神ベレヌスに由来するとする説がある。ベレヌスは「輝く者」を意味する太陽神で、アイルランドのベルテーネ祭(5月1日)の名もこれと関連するとされる。
ただしウェールズ文学におけるベリは神ではなく、人間の祖先として描かれる。異教の神が、キリスト教化の過程で王家の祖先に格下げされた例とみられる。アイルランドのトゥアハ・デ・ダナーンが妖精に、ウェールズの神々が古代の王になるという、同じ変換である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、『諸王の歴史』の写本に描かれたベリ・マウル・ヴァブ・ミノガンの図である。
祖先としてのみ存在する神という位置が、この人物を規定する。物語を持たず、系譜のなかに名を連ねる。リルと同じ型である。
関わる神格・伝承
子はアリアンロッド、スルーズ、スレヴェリス、カッシウェッラウヌス、アヴァッラハ。ドーンと対をなす。
ドーンがアイルランドのダヌに対応するとされるのと同じく、ベリはアイルランドのビレ——ミール・エスパーニェの父——に対応するとする説がある。
文化的足跡
ウェールズの王家の系譜において、ベリ・マウルは最も重要な祖先の一人であり、中世の系譜文書に繰り返し現れる。