リル
リル · レル · アッロード
アイルランド神話の海の神で、名は「海」を意味する。固有の物語を持たず、マナナン・マク・リルの父称と『リルの子ら』の悲劇の名としてのみ記憶される。四人の子は継母に白鳥に変えられ九百年を過ごした。
解説
概要
リル(Lir、レル。古アイルランド語で「海」の意)は、アイルランド神話の海の神である。その名は、独立した神格というより海の擬人化であることを示唆する。初期の系譜ではアッロードと名づけられ、ウェールズ神話のスィールに対応する。
リルは主として祖先の存在であり、中世アイルランド文学に頻繁に現れる神マナナン・マク・リルの父である。『リルの子ら』の物語では、名祖の王として現れる。
神話・物語
リルは、ウェールズの対応者スィールと同じく海の神であるが、ゲール神話の場合は息子マナナン・マク・リルがその位置を引き継いだようであり、より目立って現れる。父の名は「マク・リル」(リルの子)という父称のなかにのみ残る。
リルの子ら。 アイルランドの「三つの悲しみの物語」の一つである。
トゥアハ・デ・ダナーンが王を選ぶとき、リルはボズヴ・ダルグに敗れた。ボズヴは和解のため、自らの娘アーヴを妻として与えた。二人には四人の子——フィヨンヴァラ、アド、フィアフラ、コンという一女三男——が生まれたが、アーヴは死んだ。
ボズヴは次の娘アイフェを与えた。しかしアイフェは夫の愛が子らに向くことを嫉み、呪いによって四人を白鳥に変えた。九百年——デーラヴァラ湖で三百年、モイル海峡で三百年、イーリス・ドムナンで三百年——白鳥として過ごし、キリスト教の鐘の音を聞いて人の姿に戻るという条件であった。
九百年ののち、四人は老いさらばえた姿で人に戻り、洗礼を受けて死んだ。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ダブリンの記念公園の《リルの子ら》の彫刻である。
父としてのみ存在する神という位置が、この神格を規定する。固有の物語を持たず、息子の父称と、子らの悲劇の名としてのみ記憶される。
白鳥への変身と九百年の待機は、異教から christianity への移行を物語る。異教の神の子らが、鐘の音を聞いて人に戻り、洗礼を受けて死ぬ。
関わる神格・伝承
子はマナナン・マク・リル、および白鳥に変えられた四人。ウェールズのスィールに対応。
文化的足跡
ダブリンの記念公園(1966年)に立つオイシーン・ケリーの彫刻《リルの子ら》は、アイルランド独立運動の犠牲者を悼む記念碑であり、白鳥に変わる四人の姿がその主題である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。