アペデマク
アペデマク · アパデマク · Apedemak
メロエ固有の戦の神。人の胴に獅子の頭を持ち、三つの頭と四本の腕を持つ姿でも表される。エジプトの宗教に対応する神がいないクシュ土着の神格で、王権と結びついた。妻はアメセミ。
解説
概要
アペデマクは、ナイル川上流に栄えた古代クシュ王国のメロエの人々が祀った戦の神で、獅子の頭を持つ姿で表される。クシュの神々の多くがエジプトの神々と対応するなかで、アペデマクにはエジプトに対応する神がいない。メロエ独自の神が、王権と結びついて神々の中心に立ったのである。三つの頭と四本の腕を持つ姿でも表される。
なお本サイトの分類では、ヌビアとクシュの体系に含めて扱う。
エジプトにない神
クシュはエジプトの文字や神々を受け入れたが、そのすべてを受け入れたわけではなかった。アペデマクは、エジプトに対応する神がない、メロエ固有の神である。紀元前3世紀以降のメロエの時代に、王権と結びついた重要な神となった。名の意味ははっきりしない。「父なる王」と訳されることがあるが、メロエ語の語彙からは確かめられていない。名の末尾の mk は、メロエ語で「神」を表す語根とみられる。
三つの頭、四本の腕
ナカの獅子神殿の浮彫には、三つの頭と四本の腕を持つアペデマクが刻まれている。エジプトの美術には、頭や腕の多い神はほとんど現れない。ヒンドゥーの神々の多くの腕と形が似ているが、両者に接触があった証拠はなく、それぞれ独立に生まれたと考えるのが一般的である。同じ神殿の別の場面では、蛇の体に獅子の頭を持つ姿で、王に穀物を差し出している。
獅子の神
ヌビアのサバンナで、獅子は最も強い獣であり、王は獅子になぞらえられた。獅子の姿をとる神はエジプトにも多く、雌獅子の女神セクメトのほか、雄の獅子神マアヘスがいる。アペデマクの獅子頭の姿はマアヘスとの習合から生まれたとみる研究者もいる。ただし名はメロエ語であり、神殿も南のブタナ地方に集まっている。
ナカの獅子神殿
ナカの獅子神殿は、1世紀に、王ナタカマニと女王アマニトレ(カンダケの項を参照)の時代に建てられた。神殿の正面には、王と女王がそれぞれ敵を打つ場面が、同じ大きさ、同じ仕草で刻まれている。クシュで女性が高い地位を占めていたことを示すものである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ナカの獅子神殿の後壁の浮彫である。三つの獅子の頭と四本の腕を持つアペデマクが刻まれている。
関わる神格・伝承
妻はアメセミで、アレンスヌフィスやセビウメケルとともにメロエの神々をなす。
ヌビアの太陽の神マンドゥリスも、エジプトとヌビアの境で祀られた神である。
エジプトで香の神とされたヌビアの神デドゥンも、ヌビアの神々の一柱である。
文化的足跡
ナカとムサワラット・エッ=スフラの遺跡は、2011年に「メロエ島の考古遺跡群」としてユネスコの世界遺産に登録された。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。