デドゥン
デドゥン · デドウェン · Dedun
ヌビア(クシュ)起源の神で、エジプトでは香の神とされた。香が高価な輸入品でヌビア経由でもたらされたことによる。トトメス3世がセムナに神殿を築き、征服地の神を祀ることで統治の正統性を示した。
解説
概要
デドゥン(Dedun、デドウェン)は、古代エジプトとスーダンで崇拝されたクシュあるいはネハシ(Cグループ文化)の神であり、前2400年にはすでに確認される。
その本来の性質については多くの不確かさがある。とりわけ、獅子として描かれたことがあり、これは通常他の神格の子に割り当てられる役である。加えて、この神格が生じた初期のクシュ神話については何も知られていない。
なおヌビアの神格であるが、本サイトの分類ではエジプトの体系に含めて扱う。
職能
エジプトの文書におけるデドゥンについて知られる最も早い情報は、その記述の時点ですでに香の神になっていたことを示す。
当時、香は高価な輸入品であり、ヌビア経由でもたらされた。ヌビアの神が香の神とされたのは、その産地との結びつきによる。
『ピラミッド・テキスト』において、デドゥンは王に香を捧げる者として現れる。「ヌビアの若者デドゥンが、汝のために香を焚く」。
セムナの神殿
トトメス3世(前1479〜1425年)は、第二急湍のセムナに神殿を築き、デドゥンと、神格化されたセンウセレト3世に捧げた。
エジプトがヌビアを支配した時代、現地の神を祀ることで統治の正統性を示した。征服者が被征服者の神を祀るという政策である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、セムナ西のトトメス3世神殿の浮彫である(レプシウス『エジプトとエチオピアの記念物』所収)。
エジプトの図像においては人の姿で表され、ヌビア風の装いをする。獅子として描かれる例もある。
外来の神が国家の祭祀に組み込まれるという経緯が、この神を規定する。エジプトの神々の枠組みのなかで、ヌビア起源であることが明示され続けた。
関わる神格・伝承
ヌビアの神。エジプトの香の祭祀に関わる。センウセレト3世とともに祀られた。
文化的足跡
セムナの神殿は、アスワン・ハイ・ダム建設に伴う遺跡救済事業で移築され、現在はハルツームのスーダン国立博物館の敷地にある。