蔵王権現
ざおうごんげん · 金剛蔵王権現 · 金剛蔵王菩薩
修験道の本尊で、インドに起源を持たない日本独自の仏。役小角の祈りに応じて釈迦・千手観音・弥勒が現れたが柔和すぎるとして退けられ、忿怒相の蔵王権現が示現した。片足を蹴り上げる姿は日本の仏像で際立って特異。
解説
概要
蔵王権現(ざおうごんげん)は、日本独自の山岳仏教である修験道の本尊である。正式名称は金剛蔵王権現、または金剛蔵王菩薩。
インドに起源を持たない日本独自の仏で、奈良県吉野町の金峯山寺本堂(蔵王堂)の本尊として知られる。「金剛蔵王」とは究極不滅の真理を体現し、あらゆるものを司る王という意。権現とは「権(かり)の姿で現れた神仏」の意。仏、菩薩、諸尊、諸天善神、天神地祇すべての力を包括しているという。
縁起
蔵王権現は、役小角が吉野の金峯山で修行中に示現したという伝承がある。
役小角が国家安泰と衆生救済を祈ったとき、まず釈迦如来が現れたが、末世の衆生を救うには柔和すぎるとして退けた。次に千手観音、次に弥勒菩薩が現れたが、いずれも同じ理由で退けた。ついに大地が裂けて忿怒の相の蔵王権現が現れ、役小角はこれを本尊としたという。
それゆえ蔵王権現は、釈迦如来、千手観音、弥勒菩薩の三尊の合体したものとされる。今でも吉野山の蔵王堂には、互いにほとんど同じ姿をした三体の蔵王権現像が並んで本尊として祀られている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、蔵王権現立像である(メトロポリタン美術館蔵)。
青黒い身色で、忿怒の相、逆立つ髪、右手に三鈷杵を振り上げ、左手は刀印を結んで腰に当て、右足を高く蹴り上げて岩座に立つ。片足を上げる姿は、日本の仏像において際立って特異である。
蹴り上げる姿は、悪を踏み砕く動きとされる。静止した仏像が主流の日本において、動きを表す造形である。
インドに起源を持たない仏という点が、この尊格を規定する。神仏習合の産物でありながら、権現号を持ちつつ仏として造像された。
関わる神格・伝承
役小角が感得した。釈迦・千手観音・弥勒の合体。修験道の本尊。
神仏習合の教説では安閑天皇と同一の神格とされたため、明治の神仏分離の際には、本山である金峯山寺以外の蔵王権現社の多くが、祭神を安閑天皇とする神社に改められた。
文化的足跡
金峯山寺蔵王堂は、木造建築として東大寺大仏殿に次ぐ規模を持ち、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録された。
なお修験道は今日も継承されている生きた信仰である。