テオニム THEONYM · 世界神話アーカイブ 神格を検索
ウォフ・マナフ
PLATE — 𐬬𐬊𐬵𐬎 𐬨𐬀𐬥𐬀𐬵
PERSIA · ペルシア神話
𐬬𐬊𐬵𐬎 𐬨𐬀𐬥𐬀𐬵

ウォフ・マナフ

ワフマン · バフマン · Vohu Manah

Classical Numismatic Group (CNG Coins) CC BY-SA 3.0

ゾロアスター教のアムシャ・スプンタの一柱。名は「善き思い」を意味し、人の心に働く善なる意志を神格化する。ザラスシュトラを最初に導いた霊とされ、後代には家畜の守護者とされた。

01

解説

概要

ウォフ・マナフ(アヴェスター語 vohu manah)は、アムシャ・スプンタの一柱である。名は「善き思い」「善き意図」を意味し、人が務めを果たすことを可能にする心の善き状態を指す。中期ペルシア語ではワフマン、新ペルシア語ではバフマン。manah はサンスクリットの manas(意)と同源で、『ガーサー』と『リグ・ヴェーダ』が近い層に発することを示す一例に数えられる。対立するのはアカ・マナフ(悪しき思い)である。

神話・物語

『ガーサー』の段階では、この語はまだ固有名として一貫して用いられておらず、「善き」の接頭辞なしに現れることも多い。抽象概念と神格の境が定まっていない層である。

伝承では、ザラスシュトラの前に最初に現れ、彼をアフラ・マズダーのもとへ導いたのがこの霊であるとされる。後代の神学では、人の善行と悪行を記録して裁きに関わり、死者を天で最初に迎える者ともされた。『デーンカルド』3.13–14は、ゾロアスター教の三徳「善き思い・善き言葉・善き行い」のうち、善き思いをこの霊に、善き言葉をスラオシャに、善き行いをアシャ・ワヒシュタに配している。

図像と象徴

アヴェスター語の文法では中性名詞だが、伝統では男性として扱われる。イラン本土にこの霊を表した図像はほとんど残らない。例外がクシャーン朝の貨幣である。本サイトが主画像に掲げるカニシカ1世の金貨は、裏面に光背を負って長椅子に坐し笏を執る神像を打ち、その周囲にバクトリア文字で ΜΑΝΑΟΒΑΓΟ(マナオバゴ)と銘する。表面は、肩から炎を発しながら祭壇に献ずる王の立像である。銘によって同定できる点にこの一枚の価値があり、イラン系の抽象神格がインド北西部の王権の意匠に取り込まれた経緯を示している。

被造物のうちこの霊が守るのは動物、とりわけ家畜である。抽象概念に具体的な被造物を割り当てるのは、アムシャ・スプンタの体系に共通する構えである。

系譜と関係

アフラ・マズダーが発した六柱の一。ゾロアスター教の暦では各月の第2日と年の第11月を司る。アケメネス朝の王アルタクセルクセス2世の即位名にはこの語が含まれ、ギリシア語では「ムネモン(記憶する者)」と訳された。

文化的足跡

イラン暦の第11月バフマンにその名が残り、人名としても今日まで広く用いられている。

02

領分・別名

03

資料

Wikidata
Q2879253 — 骨格データの出典
Commons
Kanishka I — 図像カテゴリ