ウル・シャナビ
ウルシャナビ · スルスナブ · Urshanabi
洪水の英雄ウトナピシュティムに仕える船頭で、ギルガメシュを死の水を越えて運んだ。石の器具を壊されたため百二十本の使い捨ての竿で舟を進めた。叙事詩末尾で、不死を諦めたギルガメシュが城壁を誇る場面の証人となる。
解説
概要
ウル・シャナビ(Urshanabi、スルスナブとも)は、メソポタミア神話の人物である。その名は珍しく解釈が難しいとされ、シュメールの名に一般的な接頭辞と、三分の二あるいは四十と読みうる楔形文字の数詞から成る。おそらく人為的な学者の造語であった。
古バビロニア版と標準バビロニア版の『ギルガメシュ叙事詩』、およびそのヒッタイト語翻案から知られる。洪水の英雄ウトナピシュティムに仕える船頭と記され、ギルガメシュをウトナピシュティムの領域へ運ぶ役を負う。標準版では、その後ウルクへも同行する。
大洪水の生き残りとみなされていた可能性、そして死の水を渡る渡し守として機能した可能性も提案されている。
神話・物語
ギルガメシュは、シドゥリに導かれてウル・シャナビのもとへ至る。ウル・シャナビは「石のもの」——舟を操るのに必要な何らかの器具——を伴っていたが、ギルガメシュはこれを壊してしまう。
代わりにウル・シャナビは、ギルガメシュに百二十本の竿を切らせた。死の水に触れれば死ぬため、一本ずつ使い捨てにして舟を進めるのである。こうして二人は死の水を越え、ウトナピシュティムの島に至った。
ギルガメシュが不死の草を得て失ったのち、ウル・シャナビは彼とともにウルクへ戻る。叙事詩の末尾で、ギルガメシュはウル・シャナビにウルクの城壁を見せ、「この城壁を見よ、この煉瓦を見よ」と誇る。
ウトナピシュティムはウル・シャナビを追放したとされ、以後この船頭はウルクに留まった。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
渡し守という位置が、この人物を規定する。ギリシアのカローンと同じく、生者の世界と彼方を隔てる水を渡す者である。ただしウル・シャナビは死者ではなく、不死を求める生者を運ぶ。
叙事詩の最後の聞き手であるという点も注目される。ギルガメシュが不死を諦め、都市の城壁を誇る場面の証人が、この船頭である。
関わる神格・伝承
ウトナピシュティムの船頭。シドゥリに導かれてギルガメシュと出会う。
文化的足跡
ウル・シャナビの舟と「石のもの」の正体については、古代の航海技術との関連で議論が続いている。